オペレーター支援ツールKARAKURI assistを導入しました。
星野リゾートは、「旅を楽しくする」をテーマに、圧倒的非日常を提供する「星のや」、温泉旅館「界」、想像を超える体験が溢れるリゾートホテル「リゾナーレ」、「街ナカ」ホテル「OMO(おも)」、みんなでルーズに過ごすホテル「BEB(ベブ)」の5ブランドを中心に、国内72施設(国内67、海外5)を運営しています。
当社の宿泊予約センターでは、星野リゾート全施設の予約やお問い合わせを電話と電子メールで受け付けています。宿泊業界では通常、各施設のスタッフが予約対応を行いますが、時に目の前のお客様の接客と鳴り続ける電話の間で板挟みになることがあります。そこで、現場スタッフが目の前のお客様に専念できるように、予約専門のセンターを設立しました。
電話対応の効率化やWeb予約ページへのAIチャットボット導入など、業務の生産性向上に力を入れてきましたが、メール業務には課題が残っていました。長年にわたって蓄積された返信文のテンプレートは5,000件以上あり、ブランドや施設ごとに階層構造で管理されています。
ベテランオペレーターはこの階層を把握しており、すぐに適切なテンプレートを見つけることができますが、新人はどのテンプレートがどこにあるかを把握できず、返信に時間がかかっていました。現在、ベテラン・中堅・新人の割合は4:3:3ですが、2023年には若い人材の積極採用を行う方針としたため、新人の割合が増える見込みです。そのため、経験に頼らずにメール業務を遂行できる体制が必要でした。
一方、ここ2〜3年で生成AIが著しく台頭しています。生成AIに関する基本方針としては、もう少し情勢を見守ろうかと思っていますが、業務を改善するのに役に立つと考えています。特に、お客様向けにそのまま使うのは難しいとしても、社内の効率化やお客様向けに近いところで何かできるのではないかと思い、情報収集を行っていました。
あるとき、生成AIをどう業務に活用するのかというテーマのウェビナーでカラクリ社代表の小田さんがお話しされた内容を聞き、まさにお客様向けでサービスを考えている会社だと思い、個別にお話を伺いました。その中で、オペレーター支援ツール『KARAKURI assist』の存在を知り、これは円滑なテンプレート活用に悩んでいる当社に適したツールだと思いました。
1つめは、テンプレートを人が探すのではなく、検索で簡単に呼び出せる機能があったことです。階層管理では構造が複雑になり、深くなるほど探すのが難しくなります。そんな時にカラクリ社の担当者が「探すのではなく、テンプレートをどんどん作り、それをすぐに呼び出せるようにしましょう」と提案してくれました。これは非常に理にかなっており、当社にぴったりのツールだと思いました。
2つめは、テンプレート活用機能に加えて、生成AI機能も備えており、返信文の自動生成ができる可能性があったことです。当社にはすでに5,000件を超えるテンプレートがあるため、これらを学習させることで、典型的な返信文なら生成できるのではないかと考えました。カラクリ社の担当者に尋ねたときに、「返信文の自動生成という未来を考えています」という答えが返ってきたので、ここでも意を強くしました。
最後の3つめが、ユーザー単位のライセンス体系が当社のニーズに非常にマッチしていたことです。大きなポイントでした。このツールの利用をスタッフ全員に強制するつもりはなく、ベテランスタッフにとっては既存の方法が速い場合もあるため、使いたい人が使う、あるいは新人をサポートするためのツールとして導入を考えました。ユーザー単位での導入が可能だったため、スモールスタートを切ることができました。
宿泊予約センターの中で、チームを2つ作りました。
1つは、テンプレートを徹底的に活用して業務の効率化を進めるチームです。ここでは、テンプレートの母集団にそもそも余計なものを入れないように中身を取捨選択したり、スピーディーに呼び出す工夫をすることを追求します。5,000件もあるためか、最初は意図したものが呼び出せなかったり、候補が多すぎたりすることがありました。これはチューニングが必要だと考え、テンプレート1つひとつに「これは『界(星野リゾートが全国に展開する温泉旅館ブランド)』の中の『箱根』に関するテンプレート」といったように、グループ分け・タグづけをし、呼び出しやすくする工夫を行いました。
もう1つのチームは、将来に向けて生成AIが返信文を自動的に作るための準備をするチームです。どういうプロンプトを提示すれば、こちらが意図する返信文を作ってくれるかトライ&エラーを繰り返しながら、返信文生成の精度を上げています。
新人支援において大きな役割を果たしています。
新人はまずメール業務から始めます。電話業務は瞬発力が求められ、情報が頭に入っていないと対応が難しいですが、メール業務なら少し時間をかけて調査しながら返信文を作成できます。当社の施設に関する情報はすべてイントラネットに載っており、新人はそこで学習しますが、国内外に69施設あるため、その全貌を把握するのは新人にとって難しいものでした。
しかし、KARAKURI assistの導入によりテンプレートの活用が容易になり、2024年4月に入社した新人4名が早い段階でメール業務デビューを果たしました。メール業務に専念しているということもありますが、すでにベテランを超える数のお問い合わせメールに対応しており、重要な戦力として定着しつつあります。
他にも自動校閲機能により、日本語表記の間違いがないことが担保できており、担当者本人やチェックする上長からも作業が楽になったと聞いています。
また、生成AI機能の利用では、お客様の予約状況をシステムに確認しないと回答できないものを除いた、食事の時間や施設内施設の営業時間など、普遍的な内容の返信文の生成を行っています。私たちが登録したテンプレートを正しく参照しながら最適な文章を生成してもらうため、よくあるお問い合わせが多いブランドから1つずつ挑戦し、そこで80%の正当率を達成できたら、次のブランドに広げていくという形で進めています。現時点で3ブランドまで目途が立っています。
正直、今の段階では時間的な効率化にはなっていないかもしれません。というのも、まず担当者が生成AIの生成した回答内容に問題はないかをチェックし、それを上長が再びチェックした上で、OKであれば送信するというダブルチェック方式を採っているからです。しかし、返信文生成の精度が十分に上がれば、このプロセスはいずれ簡略化できます。今は、将来的に生成AIを活用するための準備期間だと考えています。
KARAKURI assistで実現したいのは、メール業務の効率化です。当社は2024年に5施設の開業と1施設のリニューアルを予定しており、今後も施設が増えていく見込みです。また、若い人材や観光産業未経験の人材の採用が増えていくと予想される中でも、業務品質とスピードを維持する必要があるからです。
また、私たちが目指す未来はさらに先にあります。お客様の要望に応える返信文を確実かつ迅速に作成できるようになったら、「旅を楽しくする」を掲げている私たちとしては、そこに気の利いた、+αの提案ができないかと考えています。例えば、「お越しになる途中に美味しいお菓子を出すお茶屋さんがありますので、時間があれば立ち寄ってみてください」や「実は、ガイドブックには載っていない観光スポットがあります」といった、お客様の期待を超える対応で、星野リゾートらしさをお届けしたい。KARAKURI assistは、そのための時間を作ってくれるツールだと考えています。
カラクリ社には、スタートアップらしい開発・アップデートサイクルの速さと、導入後も伴走し続けてくれる姿勢に好感を持っています。これからも私たちが実現したい世界に向けて一緒に走ってもらえると嬉しいです。
株式会社星野リゾート
本社:長野県北佐久郡軽井沢町大字長倉2148
設立:1914年
事業内容:リゾート・温泉旅館運営、ブライダル、別荘マネジメント、エコツーリズム、スキー場運営
企業公式URL:https://hoshinoresorts.com/
【取材に対応していただいた方々】
株式会社星野リゾート マーケティンググループ統括室 プロジェクトマネージャー 鈴木 貴大氏
株式会社星野リゾート 宿泊予約センター 三上 千晶氏
株式会社星野リゾート
本社:長野県北佐久郡軽井沢町大字長倉2148
設立:1914年
事業内容:リゾート・温泉旅館運営、ブライダル、別荘マネジメント、エコツーリズム、スキー場運営