有人対応比率は導入前の半分以下、成果を支えるのは地道な運用とVOC活用|株式会社インターネットイニシアティブ・株式会社IIJエンジニアリング

(写真・左)IIJ社内マスコットの「バリーくん」を抱える、株式会社IIJエンジニアリング 袖山 和穂 氏
(写真・右)カラクリ犬を抱える、株式会社インターネットイニシアティブ 野村 梨絵 氏

突発的な問い合わせ増加で放棄呼が多発

まずはどのような会社なのか教えてください

株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)は、1992年、国内初の商用インターネットサービスプロバイダとして設立されました。現在では、IIJグループとして約13,000社の法人顧客に対して、インターネット接続、クラウド、セキュリティ等の各種ネットワーク・ITサービスから、システム構築や運用管理などのシステムインテグレーションまで、総合的なネットワーク・ソリューションを提供しています。

株式会社IIJエンジニアリングは、商用インターネットサービスプロバイダの草分けである株式会社インターネットイニシアティブのサービス運用監視業務を担う子会社として、1998年に設立されました。以来、データセンターでの運用監視業務やヘルプデスクの運営などをはじめネットワーク運用管理に関する様々なアウトソーシングサービスを提供しています。

KARAKURIシリーズを活用しているサービスについて教えてください

株式会社インターネットイニシアティブが運営する格安スマホサービス「IIJmio」と、インターネット接続サービス「IIJmioひかり」で活用しています。

mio(ミオ)は「私の」「私のもの」という意味のイタリア語です。IIJmioは、多様化する個人ユーザのニーズに応え、「必要な機能を自由に組み合わせて自分流のインターネット環境を構築できる」という発想のもとに、2001年8月に誕生したブランドです。当時の個人向けインターネットサービスは、接続・メール・Webなどの機能が全て一緒になったものがほとんどでした。以来、IIJmioは自分のスタイルを大切にする方へワンランク上のインターネット環境を提案しつづけ、2012年には個人向けのモバイル接続サービスを開始しました。なお、IIJmioモバイル 回線数は2022年9月末時点で、1,178,269 回線と、多くの方にご利用いただいています。

チャットボットを検討したきっかけを教えてください

導入を検討した2019年当時、弊社には電話・メール・有人チャットの3つの問い合わせチャネルとFAQページがありましたが、障害などの突発的な事象が発生した際、サポートセンターに問い合わせが集中して応答率が落ち、放棄呼が多発するという課題を抱えていました。

また、メールのやり取りはどうしても長くなりがちで、問題解決までに時間がかかってしまいます。弊社は通信インフラのサービスを提供しているので、通信が利用できないなどのトラブルを早期解決できないと、顧客満足度の低下を招いてしまう懸念もありました。

一方、チャットボットであればスピーディーに問題解決することができるため、まずはチャットボット導入により1件あたりの対応時間が長いメールの問い合わせ件数を減らそうと考えました。

Salesforce(Live Agent)との連携で満足度の高いチャットサポートを実現

KARAKURI chatbot導入の決め手は何でしょうか?

ベンダー選定にあたっては、取引先企業から情報収集を行ったほか、展示会にも足を運びました。最も重視していたのが、Salesforce(Live Agent)とのシステム連携です。弊社では、お客様がチャットボットに質問して解決できなかった場合、有人チャットに切り替えるようにしています。通常、有人チャットに切り替えると、オペレーターが個人を特定するためにお客様とのやり取りが発生し、お困りごとの解決までに時間がかかってしまいます。

一方、チャットボットに個人認証の仕組みがあれば、Salesforceに登録されている顧客情報と自動で照合できるので、スムーズに問題解決へと導くことが可能になります。こうした事情から、Salesforceとシステム連携ができることは必須条件でした。

最終的に4社の候補が残りましたが、KARAKURI chatbotはSalesforceやLive Agentとの連携実績があり、これが決め手となりました。

有人対応比率は導入後大幅に減少、FAQシステムと有人チャットもKARAKURIシリーズを採用

KARAKURI chatbot導入後は、どんな効果がありましたか?

KARAKURI chatbotは2020年6月から利用しているのですが、有人対応比率が大幅に減少しました。

チャットボットで効果が出たので、2021年9月にFAQシステムもSalesforceからカラクリさんのツール「KARAKURI smartFAQ」に変えたところ、さらに有人対応比率が減少しました。チャットボットとFAQシステムの運用が別々になっていることに煩わしさを感じていたのが検討の発端でしたが、smartFAQを導入してからはチャットボットとの一元管理ができているので、とても満足しています。実は、以前はFAQページの閲覧数や満足度はわかっていませんでした。smartFAQに変えてからは想像以上にFAQページが見られていることがわかり、知らなかった世界が見えました。

現在は有人チャットもカラクリさんのツール「KARAKURI talk」を使っています。以前使っていたLive Agentはオペレーター画面の操作が難しかったのが乗り換えの理由です。例えば、お客様への返信文を作成中、うっかりエンターキーを叩いてしまうと誤送信になってしまいます。KARAKURI talkは、送信した後も数秒以内なら取り消しができるなど誤送信防止が考えられた機能やUIのため、事故防止はもちろんですが精神衛生上オペレーターに優しいと感じました。

また、入電数が抑えられる分、一人ひとりのお客様に対してオペレーターが丁寧に対応できるようになりました。お客様とチャットボットの会話内容を有人チャットに引き継ぐことも可能となったほか、会員ID連携によりお客様情報を把握した上で会話を開始できることも、好影響を与えています。

さらに会員ID連携は入電対応にも活用されています。ブラウザからのWEB無料通話で、電話機(電話設備)へ接続させるインターフェースサービスを使用していますが、その入口をKARAKURI chatbotにすることで、ビジュアルIVRとして機能するようにしています。この仕組みのおかげで、電話でも顧客を特定した状態で、通話を開始できるようになりました。

効果の裏には地道な運用が

KARAKURI chatbotを使いこなす上で、工夫している点はありますか?

導入した後のメンテナンスが重要だと思っています。「AIは勝手に何でもやってくれる」と期待するのではなく、人間がちゃんと手を加えて育てていくことで、本当の意味でお客様の役に立つチャットボットが出来上がっていくものだと考えています。ツールは入れただけでは効果がでないということは、これまでの経験で身に沁みていました。KARAKURIシリーズは管理画面でレポートを容易に出せるので、そうした細かなデータも確認して、改善につなげています。

具体的にはチャットボットの会話内容を半年に一回は棚卸ししたり、毎日100件AIのトレーニングを行ったり、常に動きを止めず、PDCAを回し続けています。会話内容の棚卸しでは、回答内容が現在のサービス仕様に合っているのか、お客様が誤解しやすい言い回しはないかチェックするほか、あまり見られていない情報があれば、適宜削除して整理しています。チャットボットに搭載する会話内容は多い方が良いと考える方もいるかと思いますが、見られていない会話は正答率を下げる要因になりかねないので、なるべく鮮度の高い情報を優先的に登録しています。確かに手間のかかる作業ですが、KARAKURIシリーズは管理画面のUIがわかりやすく簡単に使えるので、このような運用ができています。

また、チャットボット導入により見えるようになったサイレントカスタマーのVOCや問い合わせ傾向をサービス改善に活かすため、有人サポートで取得したVOCと併せてCS部門と事業全体で定例会議を実施しています。

実は有人サポートで少ないと思っていたVOCでも、チャットボット側では多くお問い合わせされていることもあるため、チャットボットの数値と合わせることで実態が見えてくることもあります。

VOC活用の意識が関係者に浸透、働き方にも変化が

チャットボットに集まったVOCの活用はどのようにされていますか?

トレンドアラートというオプション機能がとても便利です。

実は障害などの突発的なトラブルをトレンドアラートで発覚することが多いです。以前はサポートセンターに問い合わせが入り、オペレーターでは対応ができずエスカレーションされ、初めてトラブルを検知することが多くありました。トレンドアラートを使うようになってからは、すぐに関係者全員が異常を検知できるようになり、問い合わせが増える前にチャットボットとFAQサイトにお知らせを追加するといった先回りの対応ができるようになりました。結果的に、お客様の自己解決につながり、入電の抑制が実現できていると思います。

また、VOCの活用によって、カスタマーサポートに携わっていない社員から、顧客に対する関心が高まりました。従来は新サービスリリースなどで問い合わせが急増した場合、サポートチーム内で対処して反響をまとめて、担当部署に共有するという一方通行のコミュニケーションを取っていました。しかし今は、開発や企画、プロモーションなどのメンバーから「こういう企画をする予定なのですが、チャットボットに情報を載せられませんか」という依頼が事前に来るなど、双方向で活発なやり取りが起きるようになりました。

チャットボットの導入により、VOCを活用しようという意識が関係者に浸透したと、手応えを感じているとともに、サービスリリース前からプロジェクトに入るなど、私達の働き方も変わりました。

※トレンドアラート…チャットボットに急増した問い合わせを自動で分析して、アラートを上げる機能。

目指すは先回りCS

今後さらに成果を出すために考えていることを教えてください

お客様一人ひとりに合う情報を的確かつわかりやすく提供できるように、コンテンツをアップデートしていきたいです。例えば動画コンテンツを作って、チャットボットやFAQに転用できたらと考えています。理想は先回りのカスタマーサポートです。お客様が問い合わせをする前に、先回りして適切な情報を届けられる仕組みを構築したいです。

カラクリさんの担当者からは毎月改善策のご提案をいただくなど、丁寧にカスタマーサクセスをフォローアップしていただいているので、さらに大きな成果につなげていきたいと考えています。


株式会社インターネットイニシアティブ

本社:東京都千代田区富士見2-10-2 飯田橋グラン・ブルーム
設立:1992年12月3日
従業員数:連結4,392名 単体2,461名
事業内容:インターネット接続サービス、WANサービスおよびネットワーク関連サービスの提供、ネットワーク・システムの構築・運用保守、通信機器の開発及び販売
企業公式URL:https://www.iij.ad.jp/

株式会社IIJエンジニアリング

本社:東京都千代田区神田須田町1-23-1 住友不動産神田ビル2号館 15F
設立:1998年2月9日
従業員数:1,084名(2022年4月現在)
事業内容:ネットワーク運用管理、テクニカルヘルプデスク、コンタクトセンター、インフラ設計・構築など、総合的なITアウトソーシングソリューションサービスを提供
企業公式URL:https://www.iij-engineering.co.jp/




【取材に対応していただいた方々】

株式会社インターネットイニシアティブ MVNO事業部 コンシューマサービス部 カスタマーサクセス課 主任 野村 梨絵 氏

株式会社IIJエンジニアリング アウトソーシングサービス部 CXデザイン課 課長補佐 袖山 和穂 氏

業種ごとに複数の事例をまとめた導入事例集で
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事例でご紹介した企業

株式会社インターネットイニシアティブ・株式会社IIJエンジニアリング

株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)は、1992年、国内初の商用インターネットサービスプロバイダとして設立されました。現在では、IIJグループとして約13,000社の法人顧客に対して、インターネット接続、クラウド、セキュリティ等の各種ネットワーク・ITサービスから、システム構築や運用管理などのシステムインテグレーションまで、総合的なネットワーク・ソリューションを提供しています。

株式会社IIJエンジニアリングは、商用インターネットサービスプロバイダの草分けである株式会社インターネットイニシアティブのサービス運用監視業務を担う子会社として、1998年に設立されました。以来、データセンターでの運用監視業務やヘルプデスクの運営などをはじめネットワーク運用管理に関する様々なアウトソーシングサービスを提供しています。

https://www.iij.ad.jp/

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