ノンボイス比率70%超達成!セブン銀行が挑んだ顧客体験と業務効率の両立|株式会社セブン銀行

顧客対応における利便性の追求は、企業が直面する普遍的な課題である。セブン銀行もまた、ノンボイス比率の拡大を目指す中で、顧客体験の質をどのように高めるかという壁に直面していた。

既存のチャットシステムは、利用率や顧客満足度の面で期待を下回り、顧客が自己解決を途中で断念するケースが多かった。同時に、有人チャット対応の品質向上も課題となっていた。これらの課題を解決し、顧客体験の向上と業務効率化の両立を目指し、同社が選んだのは、カラクリのチャットシステム※とオペレーター支援ツール「KARAKURI assist」の導入だった。

セブン銀行は、課題解決とともに新たな顧客対応の標準をどう確立したのか。その詳細を追う。

※チャットシステム…チャットボット・有人チャットツール(KARAKURI chatbot・talk)

セブン銀行について

まず、カラクリのチャットシステムを導入したサービスについて教えてください

今回、チャットシステムを導入したのは、セブン銀行公式サイトです。また、チャットオペレーターの支援ツールとしてKARAKURI assistを導入しています。

セブン銀行は、“お客さまの「あったらいいな」を超えて、日常の未来を生みだし続ける。”をパーパスに掲げ、多様なニーズにお応えするユニークな金融サービスを提供し、「近くて便利」「信頼と安心」を実現しています。ATMは、セブン-イレブンをはじめとするセブン&アイグループの各店舗に加え、商業施設や観光地、空港や駅など全国に 27,000 台以上を展開。また、利便性の高い金融口座事業や、銀行の強みを活かした便利で安全な法人向け事業、ATM運営のノウハウを活かした海外でのATM事業を展開しています。

CRMシステム更改を契機にノンボイス比率75%を目指すも、チャットシステムの利用件数向上が課題

チャットシステムのリプレイスを検討したきっかけを教えてください

セブン銀行では、ATM利用者向けと、口座利用者向けの2つのコンタクトセンターを運営しています。私たちバンキング統括部は後者を担当しており、電話、メール、チャット、SNSなど様々なチャネルを通じて、お客様の口座に関するお問合せに対応しています。

以前は、それぞれのチャネルで異なるベンダーのシステムを利用していたため、社内での管理が複雑化していました。2021年3月のシステム更改の際にこれらの一元化を図り、CRMシステムにはSalesforceを採用、チャットシステムもその付随システムに統一しました。この変更により、内部の業務がスムーズになり、特にノンボイスチャネル(電話以外の方法)の利用が効率的になりました。

この成功を受けて、ノンボイスチャネルの利用をさらに拡大し将来的には全チャネルの75%をノンボイス化する計画を立てました。この方針は、デジタルツールを使ってお客さまの自己解決を促進し、特に事業の要となる新規口座開設などのプロセスを効率化することを目指しています。

しかし、この計画には課題もありました。2021年3月から利用を開始した新たなチャットシステムにおいて、特にチャットボットでは思うような成果がでませんでした。システムを統一する前は月間10,000件〜12,000件のお問合せがありましたが、導入後は4,000件まで減少してしまいました。これは、基本的な使い勝手(UI)をはじめとする様々な課題が影響し、お客さまがチャットボットでのお問合せを途中で断念しているためと考えられます。

その後、継続的に改善策を講じた結果、お問合せは6,000件〜7,000件に回復しましたが、今後の目標達成にはさらなる改善が必要であると感じ、同様に有人チャットの見直しも兼ねてチャットシステム全体のリプレイスを検討することとなりました。

チャットシステムを探す際はどういった点を基準にされましたか?

基準は大きく2つありました。1つめは、CRMシステムであるSalesforceとのシステム連携が容易なことです。カラクリを含め5社で比較検討を行いましたが、これが難しいものは残せませんでした。

2つめは、コンタクトセンターで実現したい要件40項目の達成です。候補ベンダーに、要件40項目がどのレベルで達成可能か確認を行ってもらいました。たとえば、誤ってチャットを送信してしまったときに取り消せるか、画像の送受信が可能か、などです。

以前のシステムでも、これらの機能をカスタマイズすることは可能でしたが、開発コストや、システムの他の部分に影響を及ぼす可能性、もとの状態に戻すことが困難であることなどから断念しました。しかし、チャットシステムのリプレイスにあたっては、これらの要件をできるかぎり満たすことを目指しました。

自由度の高いカスタマイズ性と手厚いサポートで選ばれたカラクリ

チャットシステム導入の決め手は何でしょうか?

まず、大前提として当社の求める基準を満たしていたことです。Salesforceとのシステム連携実績があり、実現したい要件の40項目中37項目の実現が可能で、比較候補5社の中で1番具体的に実現イメージを持つことができました。特にカスタマイズ性に関して、管理画面を通じてこちらで自由に設定できる範囲が広いという点はとても大きなポイントでした。

また、カラクリ社のサポート体制も決定的な要因でした。今回、社内のシステム部門ではなく業務部門の当部が主導するプロジェクトとして推進する必要があったのですが、私たちが慣れていない分、社内の関係部署や既存システムのベンダー、Salesforce社との折衝を支援してくれたり、実装においての不明点を丁寧に教えてくれたり、こちらで目配りできていない点を先回りしてアドバイスしていただきました。それぞれの対応が大変迅速で、導入を決める前からサポートの手厚さを実感できたことも心が傾いた理由の一つですね。

カラクリ社という企業そのものを評価したこともあります。業界の展示会に足を運ぶなどして情報収集を始めたころから、講演でカラクリCEOの小田さんだけは他の登壇者とは一線を画す、興味深い話をしていたことが印象に残っていました。カラクリ社のアプローチは他社とは全く異なっており、プロジェクトチームみんなでビビッとくるものを感じていました。この先、どんどん進化していくことも期待でき、カラクリ社に付いていけば楽しい未来が待っているのではないかと感じています。

実際、カラクリ社のチャットシステムを採用している企業のチャットボットをいくつか使ってみると、UIデザインや機能の多様性において優れていることを実感できました。ただ、業務委託先のオペレーターが現行のチャットシステムに慣れてしまっているという事情もあり、新たに教育、習熟を図る必要があるという点は考慮が必要でした。それでも最終的にはお客さまの使い勝手を最優先に考えて、カラクリ社の採用を決めました。

顧客体験向上とノンボイス比率70%超を両立した秘訣

2024年3月には300万口座を突破され、前年比10.2%増という高い成長率ですが、お問い合わせの状況はいかがでしょうか?

口座数が増加すると、通常は問い合わせの件数も増える傾向があります。しかし、2023年下期にカラクリへのリプレイスを行って以降、ノンボイス比率が増加し、電話対応の比率は減少しました。具体的には、カラクリ導入前の2023年上期におけるノンボイス比率は48%でしたが、2024年上期には70%以上に上昇しています。一方で、電話対応の比率は2023年上期の50%から、2024年上期には28%まで減少しました。ポイントは、電話対応が増加していない一方で、チャットボットの利用が大きく伸びている点です。

ノンボイス対応をより促進するために工夫されたことがあれば教えてください

たとえば、当社は電話や有人チャットで多言語対応にも力を入れています。そこで、チャットボットを有人チャットの入口とし、お客さまが使用されている端末のブラウザ言語設定を自動的に判別し、各言語設定に応じたオペレーターへ接続するといったことを実現しています。

また、お客さま宛にお送りするメールやDMに記載しているお問い合わせ先を、チャットボット専用のQRコードに統一した点も大きな取り組みだと思います。また、ホームページの動線を整理し、電話以外の方法で解決できる仕組みを強化しました。具体的には、FAQや解決ページを充実させた上で、それでも解決できない場合に有人チャットや電話へと進む流れを構築しています。

さらに、ホームページ上で訪問者が何を解決したいのかをチャットボットが提案する仕組みを強化しました。この仕組みはFAQや案内ページと連携し、スムーズな問い合わせの動線を実現しています。これにより顧客満足度が向上し、特に口座開設やローン関連の問い合わせにおいて効果が見られます。

有人チャットについては、チャットボットで対応できない複雑な問い合わせに応える役割を担っています。そのため、オペレーターの教育を充実させ、幅広い内容に対応できるようにしています。また、オペレーターが複数の問い合わせを同時に処理できる仕組みを整えたことで、業務の効率性も向上しました。

主要KPIである有人チャットの応答率なども、以前のシステムでは手作業のデータ加工が必要で取得が大変でしたが、カラクリ社のチャットシステムではレポートが出しやすくなり、数字に触れる機会が多くなることで、より質の高いサイトやサポートの改善へつなげていくことができています。

また、有人チャットのオペレーターが回答テンプレートを呼び出すツールとしてKARAKURI assistを活用しています。当社では主要KPIのひとつにCPH(Call Per Hour)を定めていますが、カラクリ社のチャットシステム導入後は電話対応のCPHと比較して約1.5倍に伸長しました。

他の企業だと有人チャットと電話のCPHが変わらないといったお話をよく聞きますが、KARAKURI assistの効果なのでしょうか?

KARAKURI assistをうまく活用し、一人あたり同時に2~3名の有人チャット対応ができているからだと思います。1回使うとすごく便利なことに気づくので、その後の利用が定着し、自然と対応可能な件数が増えていく好循環が生まれています。これまでは回答テンプレートも、日本語と英語のものが混同しており極めて利便性が低い状況だったのですが、言語別に整理、分類されて非常に使いやすくなったことも大きな改善点です。

ベテランのオペレーターほど新しいツールを使うことに抵抗があると思っていましたが、逆にどのような回答テンプレートがあるのか、他のオペレーターがどのように使用しているのかが気になるようで、上手に採り入れて徹底活用しています。

使っていないオペレーターにも積極的に声をかけ、活用している人の使い方を見てもらうなど工夫しながら普及を図ったり、新しく入社するオペレーターには初めからKARAKURI assistありきで対応してもらっています。

以前は共通の定型文が50~60個程度しかなかったのですが、アシスト導入後、オペレーターが自由に定型文を登録できるようになり、登録数が飛躍的に増えました。また、それを基に現場から「こうしたい」という意見が頻繁に上がるようになり、現場で定型文を育てる文化ができたのが大きな変化です。

回答テンプレートが充実していくとオペレーターを強力に支援できるので、応対に有効な回答テンプレートはみんなで共有していく、また、よりよい回答テンプレートをたくさん作成してくれた人を表彰するといった取り組みで、さらなる活性化を図っていきます。

コンタクトセンターの主体的な取り組みで企業のプロフィットを創出

最後に今後の目標と、達成に向けての方針を教えてください

コンタクトセンターとしては、今後、電話対応のチャネルは一部の専用用途として残すものの、前提とする顧客対応上の標準チャネルは有人チャットとチャットボットへ大きくシフトしていきたいと考えています。すべてのオペレーターが電話だけでなく有人チャット対応のスキルを身につけることを目指し、ノンボイス比率の拡大にむけて体制を強化していく予定です。

一般的に、企業におけるコンタクトセンターはコストセンターかプロフィットセンターかという議論がありますが、最前線でお客さまに接するオペレーターの仕事の在り方が、従来のようなただのお問合せ対応だけでなく、お客さまへ企業の魅力を伝える、お客さまの声を収集する、お困りごとに対してサービスを有効に利用していただくためのお手伝いをする、あるいはそれを叶えるための取り組みを私たちが主体的に考えていくということが、結果的に企業のプロフィットにつながっていくのではないかと考えています。

将来的には、よりお客さまの負担を軽減するため、ボイスボットを活用してお問合せや手続きなどの自動対応を行っていくといったような取り組みも、ぜひカラクリさんと実現したいですね。




株式会社セブン銀行

本社:東京都千代田区丸の内1-6-1
設立:2001年4月10日
従業員数:589名(セブン銀行から社外への出向者を除き、社外からセブン銀行への出向者を含む。また、役員、執行役員、派遣スタッフ、パート社員を除く)
事業内容:ATMプラットフォーム事業、決済口座事業、海外事業
企業公式URL:https://www.sevenbank.co.jp/

【取材に対応していただいた方々】
株式会社セブン銀行 バンキング統括部 山田 陽子 氏
株式会社セブン銀行 バンキング統括部 小幡 英明 氏
株式会社セブン銀行 バンキング統括部 田畑 秀和 氏

業種ごとに複数の事例をまとめた導入事例集で
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事例でご紹介した企業

株式会社セブン銀行

本社:東京都千代田区丸の内1-6-1
設立:2001年4月10日
従業員数:589名(セブン銀行から社外への出向者を除き、社外からセブン銀行への出向者を含む。また、役員、執行役員、派遣スタッフ、パート社員を除く)
事業内容:ATMプラットフォーム事業、決済口座事業、海外事業

https://www.sevenbank.co.jp/

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