顧客対応の効率化を図る一方で、企業が直面するのは、顧客体験の質をどう維持するかという難題である。
ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社は、ノンボイス化の推進により、コスト削減や業務の効率化を実現する一方で、顧客体験の壁を感じていた。特に、技術的な問い合わせや複雑な相談に対して「人に対応してほしい」という声が少なくなかった。ノンボイス化の取り組みが進む中で、顧客の利便性とコストのバランスをどう取るかが課題であった。
ノンボイス化の先陣を切る従来のチャットボットでは限界を感じた同社は、さらに一歩進んだ解決策を模索。この課題に対して同社が選んだのが、KARAKURIの生成AIオプション「GAI」の導入だった。
ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社は、コストと顧客体験のバランスをどう取り戻したのか。その詳細に迫る。
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課題は大きく2つありました。
1つ目は、お客さまからの質問に対してチャットボットのAIの確信度が低く、正確に答えられないケースをいかに減らしていくかということでした。回答精度を上げるためには、AIのトレーニングと会話カード(チャットボットの会話に最適化されたQ&A)のメンテナンスが欠かせませんが、GAIを活用することで、回答精度の向上とメンテナンス工数の削減、さらには回答範囲の拡大を期待していました。
もう1つの課題は、ノンボイス化を推進する上で、いかに顧客体験を高めるかということです。
お客さまからのお問い合わせは、料金に関するものと「インターネットがつながらない」といった技術的なものの2種類があります。もともとチャットボットを検討した理由は、この2つの問い合わせをいかにノンボイス化できるかというところから始まっています。
しかし、一定数のお客さまからは「技術的な問い合わせは人に対応して欲しい」という声が寄せられています。一方で、事業としてはコストと利便性の最適化を進める必要があり、お客さまのニーズとの間にギャップが生じかねません。
そこで、従来のチャットボットよりもオペレーターに近い対応ができることを期待して、GAIの活用を検討し始めました。
もちろん、社内でも生成AI活用に関する議論はありましたが、一定のリスクは伴うものの、時代の変化に対応するためにも一歩踏み出す必要があると判断しました。
生成AIの特性上、どうしてもハルシネーション(もっともらしい嘘)は発生してしまうのですが、カラクリさんのGAIは定型AIの確信度が閾値を一定下回った場合に生成AIが回答するハイブリッドな仕組みなので、それが導入のハードルを下げた要因でもあったと思います。
データもほとんどなく、世間的にも事例が少ない中で取り組むことには、やはり一定のハードルがあると感じていました。特にお客さまからの質問に対して「これは生成AIで対応すべきなのか、それとも定型AIで対応すべきなのか」という判断が難しかったです。結局、その回答に対してどう感じるかはお客さま次第なので、生成AIに回答させる最適なバランスは試行錯誤しながら見つけました。
回答生成の方法は、PoCを進める中で進化していきました。PoC開始当初、回答生成のソースはチャットボットの会話カードのみでしたが、途中からHTML(Webページ)がソースとして選択できるようになったことで、回答範囲が広がり、会話カードのメンテナンス工数も徐々に削減できました。
この辺りはカラクリさんのフットワークが非常に軽く、柔軟にご対応いただけたと感じています。おそらく、すでに完成したサービスを導入するという形であれば、もっと時間がかかったと思います。今回は、お互いに新しいことにチャレンジしながら手探りで進めていたからこそ、逆にこのスピード感で実現できたのではないかと感じています。
当社では、満足度をKPIとして定めています。今回、初めての試みであったにもかかわらず、定型AIの回答とほぼ同等の満足度に近づけることができました。これまで、確信度が低い回答は満足度も低くなりがちで、満足度をどう引き上げるかについてずっと頭を悩ませていましたが、GAIを活用することでそういった問い合わせにも対応できるようになり、その課題から解放されたと思います。
AIのトレーニングに関しては、現在かなり減らしており、学習自体はあまり行っていません。主に変な回答をしていないかのチェック程度です。既存の会話シナリオの改修に関しては、金額や内容の変更があった場合には対応していますが、満足度を上げるために回答を変更するといった大幅な改修は行わず、生成AIに置き換える形で運用を大きく変えました。会話内容やシナリオを何度変更しても効果が出ない場合は、むしろ自動化した方が効率的であると感じています。
その結果、メンテナンスにかかる工数はトータルで下がっています。生成AI運用に伴い、データの登録やログの確認などの作業は発生しますが、以前のように満足度が低い部分を見て、みんなでアイデアを出しながら見せ方を考える作業は減少しました。人間のアイデアの限界を生成AIに助けてもらっていると感じています。
現在の目標としては、生成AIを安定させることと、より少ないリソースでの運用を実現することです。将来的には生成AIがどのように進化するかが大きなポイントになるかと思います。新しいモデルが次々と登場し、技術が進化している中で、弊社としてもノウハウを活かし、導入した生成AIの回答精度をさらに向上させていきたいと考えています。また、現在は定型AIで対応している範囲が多いため、少しずつ生成AIの回答範囲を広げていければと考えています。
また、今後の課題としては、生成AIと個々のサービスに対応したパーソナルな回答をどのように融合させるかです。特に、回線や工事に関するお問い合わせに対して、生成AIが適切に対応できるようにすることが大きなテーマです。セキュリティやプライバシーの制約をクリアしつつ、よりパーソナルな対応が可能になれば、顧客満足度の向上に繋がると考えています。
将来的には、生成AIがさらに進化し、お客様の感情やニーズに応じた柔軟な対応ができるようになることが理想です。今後の技術の進展に期待しています。
ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社
本社:東京都品川区東品川4-12-3 品川シーサイド TSタワー
設立:1995年11月1日
従業員数:814名(2021年3月31日現在単独)
事業内容:通信事業、IoT事業、AI事業、ソリューションサービス事業
企業公式URL:https://www.sonynetwork.co.jp/
【取材に対応していただいた方々】
ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社
NURO事業部 カスタマーサポート部 カスタマーサポート2課 課長 西澤 氏
NURO事業部 カスタマーサポート部 カスタマーサポート2課 チーフ 木村 氏
NURO事業部 カスタマーサポート部 カスタマーサポート2課 今村 氏
ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社
本社:東京都品川区東品川4-12-3 品川シーサイド TSタワー
設立:1995年11月1日
従業員数:814名(2021年3月31日現在単独)
事業内容:通信事業、IoT事業、AI事業、ソリューションサービス事業
有人対応比率は導入前の半分以下、成果を支えるのは地道な運用とVOC活用|株式会社インターネットイニシアティブ・株式会社IIJエンジニアリング
業種:通信
主な目的:KARAKURI skillsKARAKURI smartFAQKARAKURI helloKARAKURI talkKARAKURI chatbot
操作のしやすさ、FAQなどとの拡張が決め手で導入 | ソニーネットワークコミュニケーションズ様
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業種:通信
主な目的:KARAKURI chatbot