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チャットボット導入前に知るべき外部ツールとの連携とメリット

チャットボットは単体で活用するよりも、外部システムとの連携でさらに効果を発揮することがあります。事例を交えながら、どのようなツールと連携できるの?連携で得られるメリットは?といった疑問を解決します。

顧客向けチャットボットの場合

2016年、対話型AI(人工知能)システムがスタートしたばかりでしたが、市場規模は2020年で87億円、2022年で132億円にまで達するとの報告がありました。※1

この背景には、LINEやFacebook Messengerなど利用者の多いメッセージツールがオープン化し、チャットボットのプラットフォームとしてメッセージツールを開発可能になったことがあります。チャットボットをLINEなどの外部システムと連携すれば、さらにその利便性が高まり、さまざまな用途、目的に拡張効果が見込まれます。

チャットボットを外部システムと連携するためには API という仕組みを使います。API とはAppliation Programming Interfaceの頭文字、つまり API はアプリケーションとプログラムをつなぐ役割です。

外部システムとチャットボットシステムの両方に、API 連携機能が備わっていれば、これら2つを連携できます。連携すれば、外部ツール上でチャットボットを展開できるようになるのです。

メッセージングアプリ(LINE、Facebook Messengerなど)

今日、全世代平均で92.5%が利用するLINE※2には、API連携が可能です。

LINEの場合のプラットフォーム(使用基盤)はLINEに限定されますが、チャットボットを実装するとLINEを利用するお客様にとっては、利便性が非常に高まります。

LINE Message APIを利用するメリットの例としては、LINEのトークルームで予約機能やデジタル会員証の利用が可能になったり、通常のコミュニケーションツールとしてメッセージ・画像・位置情報送信する機能が使える点が便利です。
使い慣れたLINEのインターフェースがそのまま利用でき、リッチメニューは直感的に選択できる良さもあります。

また、Facebook API(Graph API)は、Facebook Messenger(フェイスブック・メッセンジャー)から外部データ取得、投稿、更新などを可能にします。無料で作成できるものもあり、メッセージの返信の他、商品をお勧めする機能もあり、マーケティングには効果的なツールです。

有人チャットツール

有人チャットツールでは、自社のWebサイトやスマホアプリで、オペレーターが顧客と直接チャットします。

API連携すれば、FAQ(頻繁にたずねられる質問)やAIで自動応答が可能な内容についてはチャットボットで対応できます。専門的な質問や、個別対応が必要な顧客への相談にはオペレーターが引き継いで、有人チャットに切り替える柔軟な対応を実現します。

連携のメリットは、より多くの顧客に対応でき、オペレーターの業務効率を向上させる点です。チャットボットで対応した顧客情報やコミュニケーション内容を記録し集積することもでき、サービスの質向上が図れます。

CRMシステム(Salesforceなど)

CRM はCustomer Relation Managementの略で、顧客関係管理ツールです。

API連携すると、全社の顧客情報を一元化し、リアルタイムに共有します。

クラウドサービスが提供されているSalesforce(セールスフォース) CRMなどでは、職員がどこにいてもCRMの顧客情報をモバイルで参照でき、きめ細かで臨機応変な対応が、顧客満足度を向上させるでしょう。

また、CRMへのアクセスポイントが増えると、顧客情報のセキュリティ確保が最重要です。APIは自社で開発する必要がないため、セキュリティレベルの高いAPIを利用することで信頼度を高められます。

Web接客ツール(KARTEなど)

現状のお悩みに多いのは、従来のアプリやシステムに顧客データが別々に集積されたまま活用できない点です。API連携により、顧客に最適にパーソナライズした活用ができる点が注目されます。

Web接客ツールは、顧客ごとに焦点を当て、パーソナライズしてまとめることが可能です。行動ログからCX(Customer Experience)を可視化したり、個々の顧客状況に合わせたコミュニケーションを実現します。サイトの構成要素をノーコードで管理・更新・評価できるサイト管理システムが提供されている点もメリットです。

KARTEの例では、KARTEが以下の➀②③をワンストップで行います。

  1. 蓄積データを連携集約
  2. データ加工・分析
  3. データ活用

社内向けチャットボットの場合

API連携により効率化が図られるのは、顧客向けばかりではなく、社内の業務改善にも最適です。どのようなメリットがあるのでしょうか。

以下の点について、自動化が図れます。

  • 顧客情報収集・一元管理・検索
  • イントラ資料検索
  • 専門知識の標準化
  • 人事・総務・財務・経理などのバックオフィス業務の問い合わせ
  • テレワークによる情報システム部やIT部への問い合わせ
  • 本店・支店間の情報集約・一元管理

メッセージングアプリ(Slack、Teamsなど)

ここでは、API連携が可能なチャットボットが、社内向け業務改善へどのように利用されているのかを説明します。

導入の際は、コスト面が重要ですが、管理画面の操作性や、新たなシステムへの乗り換えが必要かなども、社員に大きな負担や影響を与えるため、考慮すべき必須項目です。
社内向けでは、社内のコミュニケーション・グループウェア(SlackやMicrosoft Teams)とのAPI連携について見てみましょう。

労務・総務・法務などの利用目的では、複雑なイントラ内の規程やマニュアルを一元管理した例があります。この例では、400人の社員の問い合わせを10%削減した上、社員は知りたい情報にすぐアクセスできるようになり利便性が向上しました。管理部門では、類似の質問に追われたり、担当者によって対応が変わる点が、自動化により解決できました。

ここでは社員の操作性が問題になりますが、チャットボットとAPI連携すれば、使い慣れているグループウェアがそのまま利用可能のため、業務への負担や影響は少ないといえるでしょう。

チャットボットと外部システムの連携事例

顧客向けチャットボットの連携事例

チャットボットが様々な外部システムと連携が可能だということを、理解いただけたところで、ここからはその連携事例をご紹介します。

メッセージングアプリ(LINE、Facebook Messengerなど)

2019年に、法人向け LINE 公式アカウントがチャットボットの API を公開し、チャットボットを使った開発やアレンジが可能になりました。

チャットによる効率的なコミュニケーションが支持され、企業は顧客との接点を持つための有益なツールだと考えたため、LINE でチャットボットを使えるようになったことを機に、チャットボットが急速に広がりをみせています。

LINEを利用したチャットボットが提供できる内容を以下にご紹介します。

  • 問い合わせ窓口として、質問に答えたり、必要な情報を顧客に提供
  • 配達依頼やデリバリー注文を受け付け
  • チャットボットの回答ロボットをキャラクター化し、エンターティメント要素を提供
  • 診断コンテンツの提供:チャットボットで診断し、診断結果に合ったサービスや商品を案内
  • アンケート機能:利用者にアンケートの質問をし、任意に回答を集積

また、Facebook Messenger APIを利用して、顧客との関係を構築している例もあります。

  • Messengerによる自動化で顧客の問い合わせの75%超を解決(LBC Express)
  • Messengerでリード(見込客)獲得が88%向上(AVON Poland)など

有人チャットツール

専門知識が必要な問い合わせ対応や、顧客へのカスタマイズを要求される場面では、AIチャットボットの対応からスムーズに有人に切り替えて対応する「AIチャットボット」と「有人チャット」を併用するものがあります。

このような場合、いったんAIチャットボットが全ての問い合わせを受けとります。その後、質問の中で回答できないものは有人対応に切り替えるのです。この切り分けるプロセスでは、問い合わせの導線の整理、有人に切り替えるタイミング、引き継ぐべき担当部署の切り分けを、Q&Aのメンテナンスを行うたび、反映しながら精度を上げていきます。

CRMシステム(Salesforceなど)

Salesforce CRM(顧客管理システム)とチャットボットの連携では、いかがでしょうか。

ここでは、Salesforce(LiveAgent)とAIチャットボットを連携する例で解説します。LiveAgentはSalesforce Service Cloudの機能の一つとして提供されている有人チャットツールです。AIチャットボットが問い合わせを受け取り、解決できない場合はLiveAgentに引き継ぐという流れです。

まず顧客がAIチャットボットに問い合わせをする際、会員IDから自動的に顧客を特定します。次にLiveAgentに接続する際、会員IDの情報をAIチャットボットからLiveAgentに受け渡すことで、チャットオペレーターは個人を特定した状態で会話を始めることができるのです。

この連携によってオペレーターは顧客を特定するためのやり取りが無くなり、スムーズに会話を始めることができます。顧客側もスムーズにサポートが受けられるため、顧客満足度向上の効果もあります。

さらに、オペレーターと顧客のやり取り(会話ログ)を自動的にSalesforceに記録(ケース作成)することができるため、アフターコールワークの効率化も可能です。

Web接客ツール(KARTEなど)

API連携前では、顧客データや活動・コミュニケーションの記録は、社内の各システムに別々に記録・保有されており、紐づけされていない状態です。

Web接客ツール(KARTEなど)を連携すると、顧客ひとり一人にパーソナライズされたデータ管理を可能にします。一元管理できれば、企業は顧客をより深く理解でき、ユーザーである顧客から見れば、快適なCX(顧客体験)を体験できます。

では、KARTEの例で、Web接客ツールと連携する効果をご説明しましょう。

  • 行動ログを元にCXを可視化
  • 全データを一元管理し顧客との接点を生み出す
  • 最適なコミュニケーションを実施できサービスの品質の向上
  • ノーコードで評価・管理・更新

社内向けチャットボットの連携事例

ここまで、社外対応の連携事例を見てきました。社内の問い合わせについて、どのような問題点があり、チャットボットでどのように解決できるのかを解説します。

メッセージングアプリ(Slack、Teamsなど)

社内での問い合わせの問題点は何でしょうか? 多いお悩みとしては、以下が挙げられます。

  • 資料・マニュアルの保存場所がわからない
  • 悩み解決までの時間がかかりすぎる
  • 対応する人の経験や知識で対応が異なる
  • データが共有されておらず社外からの問い合わせに対して「正しく回答できているか」が不安
  • 繁忙期に問い合わせするのは気が引ける

これらの問題点に対し、社内向けチャットボットを導入し、SlackやTeamsと連携して問い合わせできるようにすると、何が解決できるのでしょうか?

  • 問い合わせ担当部署、資料・マニュアルが即座に見つかる
  • 待ち時間なしに回答が得られる
  • 気楽にいつでも問い合わせできる

導入後は、人事・総務・法務・CSR・労務・経理・IT・広報などの広い領域にカスタマイズ可能なため、高い効果が期待できます。

  • 問い合わせ業務件数削減
  • 問い合わせ対応数増加
  • 社内の専門知識を標準化可能
  • 24時間・365日いつでも回答可能

チャットボットと外部システムを連携するために必要な準備

チャットボットと外部システムを連携する前に必要なことは何でしょうか。以下の視点から、自社の現状を把握し、解決したい問題点が何であるのかを洗い出しておくと良いでしょう。

導入目的: どのような課題を解決するために導入するのか

【例】 無人で24時間365日対応/リード(見込み顧客)との接点を増やす営業視点/情報収集によるマーケティング視点/定型化できる業務を自動化してマンパワー減/社外・社内対応の別など

利用範囲:どの業務をチャットボットで効率化したいのか?

【例】社内ヘルプデスク/カスタマーサポートなど

期待する効果:導入後何が得られれば良いのか?

【例】問い合わせ対応の工数削減/顧客満足度アップ/有人対応の品質向上/より多くの顧客からのフィードバックを活用してマーケティングに活かす/従業員満足度アップ/Webサイト CVR( コンバージョンレート)など

必要な機能の洗い出し

チャットボットにより搭載されている機能が異なるので利用したい機能を洗い出しておく
【例】シナリオ型/ AI 型自動学習/Excel対応/QAテンプレート/有人チャット切り替え/音声認識/ AI サジェスト/ユーザーログ分析や、レポート機能/セキュリティ管理/対応言語

システム連携

CRMなどのシステムと連携する場合は、IT部門など関係者のアサインと情報共有を行い、セキュリティチェック、具体的な連携方法の確認、スケジュール作成などを進める

チャットボットへの導線(自社のカスタマージャーニーマップはあるか?)

カスタマージャーニーマップから見えた顧客のボトルネック(仮説でも可)を解消するための導線を設計する
【例】初回訪問の場合、会員登録ができない/2回目訪問の場合、ログインができない/継続利用の場合、サービスの活用方法がわからない、解約したいなど

費用概算を見積る 自社の規模やサービスに合うもの

【例】初期費用・月額料金・ FAQ 作成費用・サポート費用・運用コンサルティング費用

メンテナンス管理(FAQ見直し/担当者はだれか?)

【例】ダッシュボードでQ&A見直し(抜けや漏れ・イレギュラー質問など)/チューニング

データ保存方法

【例】チャットログは自社のサーバーに保存/クラウドでデータ保存など

運用担当者のアサインと運用方法の確認

【例】チャットボットの利用方法/KPI設定とレポート・ダッシュボードの用意/具体的な運用方法の確認/運用頻度など

外部システムと連携しているチャットボット5選

外部システムと連携可能なチャットボットを、以下の5つの視点で比較してみましょう。

  1. 用途
  2. 価格
  3. 連携可能システム
  4. 導入企業の規模感
  5. 特長
ChatPlus(チャットプラス株式会社)
用途社内・社外問い合わせ対応
価格初期費用0円・月額1,500円~
連携可能システムLINE/Slack/Microsoft Teams/Kintone/Zoomなど
導入企業の規模感中小企業
特長安価な価格設定で、とにかく安いチャットボットを導入したい企業向け。10日の無料トライアルあり。

RICOH Chatbot Service(リコージャパン株式会社)
用途社内・社外問い合わせ対応
価格初期費用5,000円・月額18,000円~
連携可能システムLINE/Kintone/Microsoft Teams・Sharepointなど
導入企業の規模感中~大企業
特長Excelで作ったQ&Aデータを読み込むだけで、利用可能なチャットボット。30日の無料トライアルあり。

Zendesk(Zendesk, Inc.)
用途社内・社外問い合わせ対応
価格1アカウントあたり49$~
連携可能システムLINE/Facebook Messenger/What’sup/SNS(Instagram)など
導入企業の規模感中小企業
特長カスタマイズ範囲が広く、専任のエンジニアリソースが確保できるなら、Zendeskを基盤としたCS体制の構築が可能。

PKSHA Chatbot(株式会社PKSHA Technology)
用途社内・社外問い合わせ対応
価格要問い合わせ
連携可能システムMicrosoft Teams/LINE/Web/SMS/メールなど
導入企業の規模感大企業
特長外部システムとAPI経由で連携し、対話内容をCRMや顧客管理システムと連携したり、外部データベースを検索して結果を回答することが可能。
KARAKURI chatbot(カラクリ株式会社)
用途社外問い合わせ対応(カスタマーサポートに特化)
価格要問い合わせ
連携可能システムSalesforce/Live Agent/FastHelp5/Zendesk/LINE/Slackなど
導入企業の規模感大企業
特長CRMや基幹システムとの連携で、手続きや本人確認を伴う問い合わせの自動化が可能。大企業での導入およびシステム連携実績が豊富。

まとめ

チャットボットのAPI連携によって、顧客体験(CX)では、自動化による対応の質改善、顧客満足度向上、顧客との接点を増やしアクセスや成約率がアップします。すなわち、少ない人員でセールスチャンスと売上を大きく伸ばす効果があります。

また、社内向けのメリットとして、マンパワーを増やすことなく効率よく社内リソース(バックオフィス情報/イントラ資料など)にアクセスし活用できるため、労働環境の改善、業務の効率化、コスト削減、生産性向上が図れるのです。これらのメリットは、企業内の従業員体験(EX)満足度を向上させ、社員の労働環境に配慮した働き方の実現を可能にします。

このような多くのメリットは、企業全体としてのDX推進を図り、売上アップや利益率が改善することで、新たなチャンスに投資が可能となるでしょう。そして、余剰マンパワーを新しい業務や分野へ配分する機会を生み出します。結果として、顧客満足度や信頼の数段アップが期待できます。

多くのベネフィットを生み出すチャットボットのAPI連携により、企業全体の可能性をさらに広げてみてはいかがでしょうか。

※1…出典:株式会社矢野経済研究所,AI技術の活用実態と将来展望2018 -画像認識、会話AIなどの動向-
※2…出典:総務省情報通信政策研究所,令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書