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正しいチャットボットの費用対効果試算を徹底解説!

正しいチャットボットの費用対効果試算を徹底解説!

カスタマーサポートやヘルプデスクにチャットボットを導入したいけれど、チャットボットの費用対効果は実際どの程度なのか? また、チャットボットの費用対効果はどう試算したらいいのか? といった声を聞くことが多くなっています。チャットボットの費用対効果を表す場合に「オペレーター何人分の削減効果」といった表現をネットでは見かけますが、これは費用対効果を正しく表しているとはいえません。今回はチャットボット導入による定量的な効果と定性的な効果をわかりやすく、また正しい費用対効果の試算方法や費用対効果を高めるためのポイントなどについて解説していきます。

チャットボット導入の効果とは

はじめに、チャットボットを導入した場合の効果にはどのようなものがあるのかを確認しておきましょう。チャットボット導入の効果には、数値に現れる効果(定量的に表現できる効果)と数値には現れにくい効果(定性的な効果)の2種類があります。

数値に現れる効果(定量的な効果)

定量的な効果とは、「何人分の削減効果」や「具体的なコスト(金額)の削減効果」、「何%の効率改善」など、数値で表せる効果をいいます。たとえばツール導入時の社内稟議や経営陣への説明には、具体的な効果を提案しツール導入の可否を判断してもらわねばなりません。チャットボットのように効率を改善し、経営環境に資するツールを導入する場合には、必ず具体的な数値(コスト改善効果)を用意しておくことが必要になります。

数値には現れにくい効果(定性的な効果)

一方、数値では表しにくいが確実に効果のあるものを定性的な効果といいます。たとえばチャットボット導入によるヘルプデスクの属人化解消や社内の人材流動性向上、カスタマーサポートの働き方改革に対する効果などは、数値ではなかなか表現できないものの代表でしょう。このような効果やCV率(コンバージョン率)向上などの複合的な効果(他の施策と相まって向上する効果)は、ツール導入の稟議が行われる際には定量的な効果と併せて資料に記載しておくべきものです。

チャットボット導入の費用対効果事例を用途別に紹介

それでは、チャットボットの導入による効果にはどのようなものがあるのでしょうか。一般的に用いられる顧客向けの使い方と社内からの各種問い合わせに対応する社内向け用途、マーケティングにチャットボットを用いる場合で説明していきましょう。

顧客向けチャットボット

一般的にチャットボットといえば、ヘルプデスクやカスタマーサポートで顧客向けに使う用途が真っ先に思い浮かぶことでしょう。顧客からのコンタクト内容は、製品やサービスの使い方に関するものや修理・サポートの依頼、クレームに類するものまでさまざまです。サポートに関する業務はコストがかかり、利益が見えにくい内容のため、ツールの導入をためらう企業も多かったのですが、顧客サポートは顧客満足度向上や企業イメージ向上の観点からも決しておろそかにしてはならない業務です。またクラウド人事労務ソフトを提供する株式会社SmartHRでは、顧客からの問い合わせ対応の一部をチャットボットで自動化。導入後半年で月あたり2人分の工数削減を実現し費用対効果を上げています。

出典:導入後半年で「2人月分」の働き |  株式会社SmartHR

社内向けチャットボット

バックオフィス部門(総務や経理、業務など)には、常に社内から多くの問い合わせが寄せられます。そのほとんどは社内手続きや経費精算、規程に関する内容で、問い合わせする人が違うだけで毎回同じような内容だともいわれています。にもかかわらず、対応する人間はその間本来の業務を止めねばならず、業務の3分の1は社内からの問い合わせ対応という部署もあるほどです。このような問い合わせ対応時間を削減するため、社内向けでもチャットボットの活用が進んでいます。また定性的な効果ではありますが、担当者のコア業務への集中による効率アップも忘れてはいけない導入効果です。

マーケティング向けチャットボット

チャットボットはCRMなど他のマーケティングツールと組み合わせたり、会話の内容を調整したりすることによりマーケティングに使用できます。たとえば、顧客からの問い合わせ内容を蓄積してCRMと連携させれば、顧客の属性を分析したり、市場の動きを予測したりすることができます。またチャットボットの会話(シナリオ)を商品選びのサポートができるように工夫するなど、購買のボトルネックを解消する内容にしておけば売上貢献も期待できるのです。

顧客がチャットボットによく聞く内容を分析すれば、サービスのボトルネックも知ることができます。チャットボットで収集した貴重な顧客の声は製品やサービスの改善に活用可能で、このようにカスタマーサポートに寄せられた顧客の声を分析・活用することをVOC分析といいます。従来は営業担当者やカスタマーサポートのオペレーターが収集していた顧客情報や顧客からの要望などを、チャットボットは自動で収集できるというわけです。これは確実に売上に貢献できる効果だといえるでしょう。

【顧客・社内向け】費用対効果の正しい試算方法

ここからは、【顧客・社内向け】と【マーケティング向け】のチャットボット導入について、その費用対効果の正しい試算方法を解説していきます。

よくある費用対効果試算の方法は大間違い

インターネットを検索すると、チャットボット導入に関する費用対効果の記事を容易に見つけられます。ただし多くの記事では間違った試算方法が紹介されており、正しく費用対効果を算出できません。その多くは担当者の時間単価を計算し、1日もしくはひと月の問い合わせ対応時間にかけ合わせて費用対効果を算出しています。つまり質問を受ける人が対応する時間を金額換算し、そのコストが浮いた分を費用対効果としてとらえているのです。

チャットボット導入の効果を正しく計算するためには、削減された問い合わせ対応時間を一律に集計するのではなく、質問の難易度や運用工数なども考慮に入れなければなりません。

正しい費用対効果試算に必要な3つのポイント

正しくチャットボット導入の費用対効果を計算するには、どのような点に気をつけて試算をすればよいのでしょうか? 正しい試算に必要な3つのポイントについて解説します。

コールリーズン分析から始める

コールリーズン分析とは、顧客が問い合わせをしてきた理由や内容について分析することをいいます。先述のように顧客がコンタクトしてくる理由は、製品やサービスの使い方に関するものや、修理・サポートの依頼、クレームに類するものまでさまざまです。また問い合わせ内容によって、対応できる部署や回答できる人間も変わってきます。顧客からのコンタクトは一律に問い合わせと分類するのではなく、その難易度や複雑度によって分類し対応を決めていきましょう。難易度や複雑度の定義は、おおよそ以下のようなものです。

  • 難易度「低」
    • FAQやトークスクリプト、メールのテンプレートで対応可能なレベル。
    • チャットボット導入後は100%近く置き換えが可能。
  • 難易度「中」
    • ユーザーごとに、CRMなどの管理情報をチェックして個別対応しないと解決できないレベル。
    • チャットボット導入後は一部置き換え可能。チャットボットとCRMなどのシステム連携で自動化。ただし内容や複雑度によってオペレーターが対応しなければならない。
  • 難易度「高」
    • 重篤なクレームやVIP対応など、ベテランオペレーターや社員が対応するレベル。チャットボットではなく音声での直接対応が必要。

次にそれぞれの難易度の問い合わせが何件程度発生しているのか、一定期間を区切って集計し、それぞれの平均的な割合を算出します。

例)難易度「低」が約50%、難易度「中」が約30%、難易度「低」が約20% など。


また問い合わせの内容に応じて複雑度(有人での対応時間)も集計しておくと、より正確に費用対効果を算出できます。

例)複雑度「低」が7分程度の対応、複雑度「中」が15分程度の対応、複雑度「高」が30分程度、など。

最終的にこれらをデータとして集計し、オペレーターの平均時間給とかけ合わせて導入効果を算出していきます。

問い合わせチャネルが複数ある場合はチャットボットへの転換率も考慮する

顧客からの問い合わせチャネルは、1つとは限りません。カスタマーサポートへの電話やメール、チャットなど、複数のチャネルがあります。チャットボットを導入する場合には、これら複数チャネルに散らばる問い合わせの何割をチャットボットでの問い合わせ対応に転換できるか、その転換率も考慮しておきましょう。転換の割合は、前章で算出した難易度と総問い合わせ件数から算出します。

運用工数も考慮しないと悲惨な結果に

チャットボットに限らず、システムを導入する場合には必ず運用工数が必要となります。毎月のツール利用料だけでなく、運用やメンテナンスをしていくために必要な工数とコストをあらかじめ算出し、経費の中に盛り込んでおきましょう。

チャットボットは、地道な運用を続けることで徐々に効果が出てくるシステムです。運用工数を考慮せずにチャットボットを導入した結果、思った以上に工数とコストがかさみ、最終的にシステムを放置してしまうケースも散見されます。

【マーケティング向け】費用対効果の正しい算出方法

マーケティングにチャットボットを使う場合にも費用対効果は試算できます。ただし売上や利益の向上にはさまざまな要素が絡んでくるため、コスト削減とは違った観点で費用対効果を見る必要があります。

導入目的が売上貢献の場合

チャットボットをマーケティングに利用し、売上を上げていきたい場合には、その指標として「CV率の向上」や「離脱率の低減」、「回遊率の向上」などを用います。チャットボットは問い合わせページやFAQページに設置して顧客に使ってもらうのが一般的ですが、マーケティングの場合は「受動的に使ってもらう」のではなく、企業側が「能動的にチャットボットを活用」します。たとえばECサイトで顧客が自身の情報を入力する場合、入力する内容がわからずに途中で離脱してしまうことがあります。このような場合には入力や手続きのボトルネックとなる部分でチャットボットが立ち上がり、顧客を入力完了まで導くのです。このような能動的な使い方の結果、CV率が上がったり離脱率の低減が見られたりすれば、それはチャットボット導入の効果と判断できるのです。

費用対効果を高めるためのポイント

ではここで、チャットボットの費用対効果を最大限に高めるためのポイントを簡単に紹介しておきましょう。

自社で誰でも簡単に運用できるものを選ぶ

せっかくチャットボットを導入しても、運用やメンテナンスに手間や人件費がかかるのであれば費用対効果は上がりません。チャットボットの選択時には、導入後の運用を自社でできるものを選びましょう。

コールリーズン分析から顧客のボトルネックを突き止め、適切なページにチャットボットを設置する

チャットボットは問い合わせページやFAQページにだけ設置するのではなく、顧客のボトルネックとなる場所にも設置しましょう。適切なページにチャットボットを設置すればCV率の向上や離脱率の低減につながります。

チャットボットだけでなくFAQとの一元管理で二度手間を削減

チャットボットを設置したからといって、FAQをなくしてもよいわけではありません。顧客からよく問い合わせのある難易度の低い質問は、FAQとチャットボットで一元管理することにより二度手間を削減できます。

AIが運用をサポートしてくれるものを選ぶ

チャットボットの解答例や質問内容を人の手で追加していくには、工数的な限界があります。チャットボットの導入時には、AIが機械学習などで運用をサポートしてくれるものを選びましょう。

よりユーザーに利用されるための仕組みがあるものを選ぶ

先述のように、チャットボットはさまざまなページに設置することにより高い費用対効果を発揮します。チャットボットの選択時には、受動的な使われ方をするだけのシステムではなく、システムが能動的に動くなど、よりユーザーに利用されるための仕組みが実装されているものを選びましょう。

効果的な活用方法の提案など、サポートが手厚いサービスを選ぶ

チャットボットのメーカーを選ぶ際には、効果的なチャットボットの活用方法などを提案できる豊富な実績と経験をもつメーカーを選びましょう。またチャットボットは、長く運用することにより高い効果を発揮します。導入後のサポートが手厚く、長く付き合えるメーカーを選ぶことも大切です。

価格が高いものと安いもの、どっちを選ぶべき?

現在チャットボットは、さまざまなメーカーから多くの種類がリリースされています。チャットボットには、システム価格(システム利用料)が高いものや安いものもありますが、どちらを選べばよいのでしょうか?

目先の価格ではなく、出せる効果で決める

チャットボットの価値は、チャットボットの導入で生み出せるさまざまな効果で決まります。目先の価格や運用コストだけで判断せず、導入によって向上する顧客満足度やCV率など、企業価値の向上や売上への貢献、コスト削減効果をしっかり見極めることが大切です。

まとめ

チャットボットの費用対効果は数値として確認できる定量的な効果と、数値には現れない定性的な効果があります。定量的な効果は正しい計算方法でしっかりと算出し、定性的な効果を含めて費用対効果を確認していきましょう。