最近のAIはここまでできる! その発展の歴史を振り返ってみる

カラクリ編集部

2019.03.13

AIの発展の始まり~第一次AIブーム~

「AI」という単語が初めて登場したのは1950年代です。人間が知能を使って行う様々な作業を、コンピューターが担うという試みはこの頃から始まりました。

そして、最初に大きな注目を集めたのは50~60年代で、この時代には推論・探索を行う研究が進み、迷路やパズル、オセロなどの「おもちゃの問題」をコンピューターが解けるようになりました。しかしこの時点では、より複雑な実社会の問題への対応ができず、ブームは終わってしまいます。

AIに知識を入れる~第二次AIブーム~

続いて80年代には第二次AIブームが巻き起こりました。この時は、コンピューターに知識を入れて、現実に起こる様々な問題に対処させようとする動きが中心でした。ユーザーの質問を基にコンピューターが判断を下す「エキスパートシステム」の開発が進み、医療や人事、会計、金融などの実務的な分野に応用されました。

しかし、実用的なレベルの問題を解くための知識(ルール)量は膨大で、それをすべて人間が入力するのは現実的ではありませんでした。こうして、ブームは次第に下火になっていったのです。

ディープラーニング(深層学習)の登場

ディープラーニング(深層学習)の登場~第三次AIブーム~

そして、三回目となるAIブームのきっかけは、平成24(2012)年にGoogleの研究者、ジェフリー・ヒントン氏が論文発表した「ディープラーニング(深層学習)」を用いた研究でした。仕組みは後ほど説明しますが、同じ年に開催されたAI系画像認識コンテストでは、初めてディープラーニングを用いたシステムが使われ、圧倒的な認識精度を叩き出しています。

そこからAIのパフォーマンスが飛躍的に向上し、ようやくAIの本格的な活用が始まります。

Googleによる「BERT」の開発 ~直近のAIのトレンド~

また、直近のトレンドとしては、平成30(2018)年11月にGoogleの打ち出した「BERT」という技術があげられます。

「BERT(=Bidirectional Encoder Representations from Transformers)」は、対話システムや自動翻訳などに活用される「自然言語処理」をより高い精度で行うための手法の一つです。BERTでは、あらかじめ世の中にあふれる大量の文章データを、膨大な計算によって学習しておき、そのうえで目的の問題を解くように調整することで、様々な問題を解くことが可能になります。

驚くべきことに、共通の事前学習を行なったモデルが全く異なる言語の処理について性能テストをした結果、世界最高精度を叩き出し、中には人間の認識精度を上回る結果を出したものもありました。

また、Googleは膨大な計算を行った事前学習済みモデルを無償で利用できる形で公開しており、実際に様々な場面で使われるようになりました。

第三次AIブームでは画像認識精度が大幅に向上し、実用的な水準まで達しましたが、その初期には同じように大量の画像を学習した事前学習モデルが公開され、それによって画像認識の研究が劇的に進んだという背景がありました。自然言語処理でも、このBERTの事前学習モデルの公開によって、同じような進歩が起きるのではないかと期待されています。

今のAIには、どんなことができる?

それでは、こうしたAI技術の進化が、日々のビジネスにどんなメリットをもたらすかについてご説明します。

AIによる自動音声対応

AIによる自動音声対応

昨今、Amazonの「Alexa(アレクサ)」などの音声アシスタントが普及してきました。CMや街中で「アレクサ!」と呼ばれるのを見かけたことのある方も多いかと思います。実は、これらに使用されている自然言語関連技術の進化が、ビジネス上のコミュニケーションにも今後大きな変化をもたらすと考えられています。

たとえば、Googleが平成30(2018)年に発表したお店予約サービスの「Duplex(デュープレックス)」では、相手に応じた臨機応変な回答や相槌などといった、人間と区別がつかないコミュニケーションをAIでも行うことができます。その自然さは、「自らがAIである」と名乗る必要があるほどです。

こうした技術がビジネスに活用されると、たとえばAIアシスタント同士がアポイントの設定をしたり、代わりに電話をしてくれるようになったり、海外の取引先と外国語のやり取りを行ってくれるような未来も考えられるでしょう。

AIによる採用面接

AIが面接を行う時代に

また、人材採用の場面では、人事担当者の経験と勘を頼りにして採用を進めている企業が少なくありません。最近では、AIが書類審査や一次面接まで代行できるようになっていることはご存知でしょうか。

たとえば、NECが平成27(2015)年に開発したAI採用システムでは、2千人分の履歴書と採用試験の合否データをAIが学習し、応募者の履歴書の文面などから、AIが適切な人材を選抜してくれます。

Amazonではいち早くAI採用システムを導入していましたが、これまでの応募者の特性から、男性を優先して採用してしまうといった問題が起きていました。しかし現在では、ビデオ面接を挟むことで応募者の言動や表情を分析し、公平な選考を行えるシステムへと改修されています。

AIによるマーケティング

マーケティングにAIを活用

昨今のマーケティングではビッグデータの活用が進んでいますが、膨大なデータの分析は、AIの得意分野です。

たとえば、顧客の購買履歴を基に好みやセンスを分析し、それぞれの顧客の好みに合った商品を個別に提案することができます。

紳士服大手のはるやま商事では、このシステムの導入後、男女共に来店率が10%向上しています。また、アウトドア商品メーカーのThe North Faceでは、顧客がAIとの質疑応答を通じて、ユーザーに最適な商品を勧めるシステムを用いています。このシステムを2か月間トライアルした結果、75%のユーザーが「また利用したい」と回答したそうです。

まとめ

現在、AIはマーケティングや採用などの様々な分野で活用されていますが、技術の進化によって、日々のコミュニケーションの様々な面に変化をもたらしていきそうです。

さらに、こうした変化によって、省人化や時間的・経済的なコスト削減など、様々なメリットももたらされます。

およそ半世紀以上もの長い開発期間があり、その間に幾多の「冬の時代」を経験してきたAI。

しかし、画期的なアルゴリズムが次々と登場することによって、現時点ではまだ難しいとされている自然言語の意味の理解も、そう遠くない未来に実現するのではないでしょうか。そしてAIによって対応できる領域や分野は、今後も着実に広がり続けていくことでしょう。

カラクリ編集部

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