1.AIができること・苦手なことを理解する
現在、AIチャットボットが活躍している企業のサービスサイトを見かけることが多くなってきました。たとえばインターネットでショッピングをする時に、送料や配送方法を知りたくてAIチャットボットに質問すると回答される、という事例を聞いたことがあるかもしれません。
徐々に使われ始めているAIチャットボットですが、必ずしもAIチャットボット導入がどの企業でも成果を出せるわけではありません。その原因の一つとして、「AIに対する過剰な期待」が挙げられます。
AIチャットボットに関しては、「AIが組み込まれているから、どんな質問に対しても自動的に最適な回答をしてくれる」と思っている方も多いでしょう。確かにAIチャットボットは機械学習により、自ら繰り返し学習することで言葉を理解する能力が高まっていきます。ただ、人間ならではのあいまいな表現が認識できるようにはなってきてはいるものの、柔軟な聴き取りや、その対応力はまだまだかないません。たとえば、人間のオペレーターならお客様の口調や微妙なニュアンスから「相手の気持ちを察する」ことができますが、現在のAIは人間と比較すると、そこまで察する能力が高いとはいえません。
そのため、AIチャットボットを導入する前に、AIチャットボットの仕組みをきちんと理解し、自社の課題解決のためにどのように活用すべきかを検討しておくことが重要です。
【AIチャットボットが得意なこと】
- Q&A化できるような「よくある質問」の回答
- 事前にヒアリングしておくべき定型的な情報の収集
- シナリオ化やフロー化できる会話への誘導
【AIチャットボットが苦手なこと】
- 複雑で高度な質問の回答
- クレーム対応
- 個別対応
- 人間の手作業や判断が必要なオペレーション
2.課題と目的を明確にする
AIが凄そうだから、という理由でAIチャットボットの導入を検討している人もいるでしょう。AIに限らず、チャットボットを導入する際には必ず自社の課題と導入目的を明確にしておく必要があります。
【課題や目的の例】
- 問い合わせが多いが人材不足なので、一次対応をチャットボットに任せたい。
- 問い合わせ対応は平日だけ/昼間だけしか行っていなく、見逃している営業時間外の問い合わせを対応したいが人員確保が難しい。
- メールやアンケートなどでも拾えきれない、“お客様の声”を雑談も交えたチャットボットが拾ってほしい。
上記のように課題と目的を明確にすることで、課題解決のために本当にAIチャットボットが必要なのか、また、どんな場面でどのようなAIチャットボットが効果を発揮できるかをあらかじめシミュレーションしておくことが出来ます。
具体的な例を出すと、たとえばインターネット通販において「顧客がどんな商品を望んでいるのかを知りたい」という課題が挙がっている場合などは、顧客とのコミュニケーションが増えるような導線を設けることで解決につながる可能性があります。その方法の一つとして、雑談を交えながらフレンドリーに対話ができる”アバタータイプのAIチャットボット”が有効であるという推測が出来るでしょう。
また、「送料はいくら?」や「返品はできる?」といった簡単な質問にだけ答えさせたいなら、雑談にまで対応できるAIチャットボットは必要ないかもしれません。その場合はシンプルに、顧客の自由入力によって質問ができるタイプと、選択肢(シナリオ)の中から質問を選べるタイプを用意しておくだけで十分です。その上で、顧客がAIチャットボットの存在に気付きやすいようにプロモーションを行うことで、簡単な質問はAIチャットボットに/複雑な質問は有人対応に、といった問い合わせの振り分けに繋げることが出来るでしょう。
このように、まず初めに解決したい課題とチャットボットを導入する目的を明確にしておくことで、数あるAIチャットボットの中から自社に最適なタイプを選び、顧客目線でのAIチャットボット導入が行えるでしょう。
3.チャットボットのトレーニング担当を確保する
ここまでご紹介した通り、問い合わせの対応を今よりも効率よく・ミスなく行いたい場合、これまでに対応した問い合わせの傾向をもとに、利用者視点で作られたAIチャットボットが活躍できると考えられます。しかし、事前にきちんとカバーさせたつもりでも、狙い通りにいかない場合があります。
利用者は、求めている回答が得られないとすぐにチャットから離脱してしまうのが一般的です。そして、従来の電話や問い合わせフォームを利用します。そうなると担当者は、AIチャットボットの管理と従来の問い合わせ窓口の両方を対応せねばならず、かえって負担が増えてしまうことになります。
ここで、利用者が求めている回答が得られなかった原因として挙げられるのが、回答フローの作りこみ不足です。AIは大量のデータを解析・処理することで精度が上がっていくので、逆に言えばお手本となるデータが少なければ、適切な回答を提示できなくなってしまいます。初期設計時に想定し得なかった利用者の質問は、新しいお手本データとして、導入後にも順次学習させていく必要があるのです。
したがってAIチャットボットを導入した後は、「利用者が実際にどのような質問をしてきているのか」を人間がきちんと振り返り、AIに学習させる工程が肝となっていきます。たとえば毎日10〜30分ほど担当者がAIチャットボットが回答できなかった原因を分析し、正しい回答を行えるようにメンテナンスしていく必要があります。利用者にとってストレスのない、精度の高いAIチャットボットを維持するためにも、導入後の運用体制についてもしっかりと検討しておきましょう。
まとめ:AIチャットボット導入を無駄にしないために
今回は、AIチャットボット導入を無駄にしないための3つのポイントをお伝えしました。AIの進化は目覚ましいとはいえ、まだまだ人間にはかなわない部分もあります。AIのできること・苦手なことを把握し、チャットボットと人間で上手に業務を分担しましょう。
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また、初めに解決したい課題やチャットボット導入目的を明確にしておくことで、AIチャットボットの選択や初期設定がより効率よく行えます。そして、AIチャットボット導入後は、定期的なメンテナンスを欠かさないことが重要です。これら3つのポイントを押さえておくことで、課題解決において効果的にAIチャットボットを活用できるでしょう。