ヘルプデスクの仕事内容
主に中規模以上の企業には情報システム部などにヘルプデスクが設置されています。ヘルプデスクは、従業員からのIT機器や業務システムに関するさまざまな問い合わせに答えるために設置されていることが多いです。
具体的な仕事内容の例としては以下が挙げられます。
- 発注したパソコンのセットアップ
- OSや業務ソフトウェアのインストール
- IT資産管理
- 電話機材、ネットワークのセットアップ
- パソコンが壊れた際の一次切り分け、修理手配
- ネットワークトラブルの一次切り分け
- 業務用プリンタ トラブル時の業者手配
- Salesforceやサイボウズ、Excelなどの業務ソフトウェアの操作方法やトラブルシューティング
上記以外にも業務ツールの購買や独自開発する際の外部ベンダーコントロールを行うことがあります。
実は筆者である私も、所謂“一人情シス”(一人で情報システム部のような役割を担当すること)を経験したことがあります。
カスタマーセンター立ち上げで地方都市に新拠点を構えた際、情報システム部のヘルプデスクチームは東京に常駐しており、なかなか新拠点の地方都市まで行くことはできません。
そのため上記例に挙げた業務を数ヶ月間、一人で経験しました。
その時思ったことは「問い合わせの8割が、調べてみると解決できた」ということです。
所謂“ググる”ことで解決できてしまうケースが多いのです。
たとえばパソコンの電源が入らない事象では、パソコン本体裏面に記載されている型番をインターネット検索をすると、メーカーが対処方法を記載してくれています。またネットワーク機器も同様ですが、大半が「電源コードが挿さっていなかった」「LANケーブルが抜けていた」という物理的理由が原因のケースがほとんどです。これらが積み重なって本業務が滞ってしまうことも少なくありません。
このようにヘルプデスクに寄せられる回答自体は単純で定型化しやすく、実はヘルプデスクこそ、チャットボットを活用して業務効率化を行いやすい分野なのです。
まだパソコンが従業員一人一台貸与となる前は、使う人の数が限られていたため、人間のオペレーターが電話などで回答を行っていました。サービスや商品の多様化・高機能化が進むにつれて、寄せられる質問も複雑になり、問い合わせの頻度が増してきています。このため、ヘルプデスクのオペレーターには、様々な質問に答えるための幅広い知識が必要となり、新人研修が長期化するという課題があります。
また、ヘルプデスクを利用する側の視点に立っても、電話が混み合って長時間繋がらない、複数の担当者や部署にたらい回しにされてしまう、休日や深夜は対応してもらえないなど、問題解決に時間がかかってしまうのはストレスになります。
また近年は業務ソフトウェアのクラウド化が進んでおり、企業によっては人事や労務・営業・カスタマーサポートなど部署単位で最適なクラウドサービスを導入していることがあります。それぞれのクラウドサービスのヘルプデスク業務を情報システム部が集約していれば良いのですが、そうではない場合は部署単位で使用しているクラウドサービスのヘルプデスクが発生してしまい、新たな業務が生じてしまうかもしれません。
「勤怠打刻ができない」「経費申請のやり方がわからない」「人事評価システムにログインができない」といった問い合わせが、ヘルプデスク担当者のもとに寄せられてきませんか?
チャットボットでヘルプデスクを効率化
昨今では、人間のオペレーターが対応する前の一次対応として、AIを活用したチャットボットが導入されています。
チャットボットは、会話を通して顧客が抱えている問題を把握し、それに応じた解決策を自動で提案してくれます。それでも問題が解決しない場合には、人間のオペレーターが交代して専門的な対応を行うのが一般的な流れです。
こうして、一次対応のみで解決できる問題をチャットボットが代替することで、オペレーターの手間を減らすことができます。また、チャットボットを通してマニュアルを共有しやすくなり、「この問題はあの人に聞かないとわからない」という属人化の回避に繋がります。他にも、人件費の削減など、様々なメリットがあります。
実際、チャットボットは様々な企業のヘルプデスクで活用されています。たとえば三菱商事株式会社では、社内のヘルプデスクにIBMのAI「IBMWatson」を導入し、従来のオペレーター対応では正答率が67%だったところ、「IBMWatson」導入後は89%まで向上しました。
別の例では、アサヒグループホールディングス株式会社が社内での問い合わせにAIが自動応答するチャットボットを導入したところ、従来の電話応対のみでは年間72,000件ほどあった問い合わせが、半数以下に減りました。
高精度なデータ分析や自然言語認識を用いた会話ができるAIは、人間のみが行う場合には多くの手間がかかる作業を分担できるパートナーとして、今後更に普及が進んでいきそうです。
まとめ:ヘルプデスクにチャットボットを導入するメリット
顧客や社内からの問い合わせをチャットボットが代替することで、人間のオペレーターにかかっていた負担を軽減すると共に、利用者の自己解決率向上にも繋がります。
人間の自然な会話を認識・再現する自然言語認識技術は日々進化しており、より高度な会話をコンピューターが行うようになれば、ヘルプデスク業務の大半をAIが取って代わる可能性があります。その際に人間のオペレーターにしかできない持ち味とは何か、について考えてみるのも大切ですね。