チャットボットとAIは異なる?両者の違いについて徹底解説!

カラクリ編集部

2019.01.29

チャットボット

少し前まで、機械が人間の仕事を取って代わるという話はSFの中の空想でした。ですが現在はAI(人工知能)の発達により、本当に人間の仕事が機械に行われつつあることをご存知でしょうか。

人間の仕事がAIによって代替可能になることで、AIを脅威に感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし今は、AIを活用して従来の仕事をやりやすくしよう、という前向きな見方が広まりつつあります。

たとえばAIを活用できる分野の一つに、チャットボットがあります。人間と会話する感覚で自然に使えるので、最近ではチャットボットを導入した様々な企業やサービスが登場しています。

そこで今回は、現在普及しつつあるチャットボットとAIの違いを明確にすると共に、チャットボットが向いているサービス、向かないサービスを考えてみましょう。

チャットボットとAI、それぞれの特徴と違い

コミュニケーションアプリがチャットボットに対応

昨今、Facebook MessangerやLINEなどのコミュニケーションアプリがチャットボットに対応し、また「AIを使用したチャットボット」といった種類のサービスが登場しています。そのため、両者が同じものと考えてしまう方もいるかもしれませんが、実際は異なります。まずは両者の違いを明確にしておきましょう。

チャットボットとは?

チャットボットとは

「チャットボット」とは、「チャット」と「ボット」を掛け合わせた言葉です。ボットとはロボットの略称ですが、たとえば鉄腕アトムや自動車製造ロボットのような物理的な身体を持つロボットではなく、「人間の手を介さずに、自動で動作(目的を実行する)するプログラム」を指します。

チャットボットとは「自動で会話するプログラム」のことで、テキストや音声によって自動的な会話ができます。そのため、「人工無能」とも呼ばれます。

チャットボットは基本的に「人間の会話のように見えること」を目的に作られています。このため、AI、つまり人工知能のように自ら思考したり、データにどのような特徴があるかを見つけたりすることはできません。あくまで、コンピューターで「人間らしい会話」を作り出すことが目的なので、使用するアルゴリズム(問題を解くための手順)もAIと比べて単純です。

AI(人工知能)とは?

AI(人工知能)とは

次に、AIについてもお話ししましょう。

昨今、あちらこちらで「AI」 という言葉を見かけますが、実はAIとは何かという明確な定義は未だ存在しません。ですが一般的には「人間が知能を用いて行う作業ができるコンピューター技術」を指します。

その歴史は古く、AIという言葉が初めて登場したのは昭和31(1956)年、ジョン・マッカーシーという米国のコンピューター技術者が主催したダートマス会議でした。以来、AIは50~60年代、80~90年代に二度のブームを迎えますが、いずれも世間の期待値が高過ぎたために失速し、AIは過去二回の「冬の時代」を迎えた歴史があります。

三度目のブームのきっかけになったのが、「ディープラーニング(深層学習)」という手法でした。これは、人間の脳の神経細胞(ニューロン)の構造をプログラム上で真似したモデル、通称「ニューラルネットワーク」を使うことで、与えられたデータを基にコンピューターが自律的に学習する技術「機械学習」の表現能力を飛躍的に向上させるというものです。

この手法がいつ誕生したかについては現在も複数の見解がありますが、世の中に広まるきっかけとなったのが、平成24(2012)年にGoogleが発表した「ディープラーニング(深層学習)による猫の自動認識」の研究結果でした。発表では、「コンピューターが人間に教えられることなく、猫がどういったものであるかを自ら理解した」という成果が示され、世界中で話題となりました。

ディープラーニングの研究には莫大な計算コストが必要とされていましたが、コンピュータのハード性能の進歩や、計算処理に優れたモデルの低価格化などが追い風となり、平成24(2012)年頃より急速に研究が活発化していったと言われています。

ディープラーニングの登場によって、AIは一気に実用化へと向かいました。画像認識やデータ分析、推論や分類などを高い精度で行える現在のAIは、医療や農業、マーケティングや自動運転などの多岐にわたる分野で活用が進んでいます。

チャットボットにもAIが使用される時代へ

AI技術の進化はチャットボットにも影響が及び、昨今ではAIを用いたチャットボットが登場しています。

AIを用いたチャットボット

身近な例では、Appleの「Siri」や、スマートスピーカーのAmazon Echoの「Alexa」などの音声アシスタントにもAIが使われています。たとえば、他人のiPhoneのSiriを起動して「Hey, Siri」と呼びかけても反応しません。これは、Siriが持ち主の声を学習しているためです。

AIがチャットボットに組み込まれることで、ユーザーとの会話を学習してよりパーソナライズされた会話が可能になってきました。しかし、現在のAI技術では、まだ完全に人間の会話を理解するのは難しいのが現状です。

たとえば、平成23(2011) 年にスタートした「ロボットは東大に入れるかプロジェクト」では、AIの「東ロボくん」が、平成28(2016)年までに大学入試センター試験で高得点を取り、2021年までに東大入試を突破することが目標でした。実際、東ロボくんはセンター模試でかなりの好成績をたたき出しましたが、「問題文の意味理解が困難」という壁を越えられず、プロジェクトは断念となっています。

ですが、他にもAIチャットボットは様々なものが開発されています。

よく知られているのが日本マイクロソフト株式会社が開発・運営する女子高生AIの「りんな」です。LINEでチャットを通じて会話できる「りんな」は、ネット上の膨大な情報を集め、ユーザーが入力した言葉に対応する言葉を統計的に選んで、自然な会話の流れを作り出すことができるのです。

AIチャットボットが向いているサービス

このように、様々な分野でチャットボットの活用が進んでいます。では、人工無能といわれる従来のものも含め、チャットボットがメリットをもたらすサービス、また不向きなサービスについて見ていきましょう。

コールセンター

たとえば、電話の問い合わせなどの手順や手続きの案内といった、どのような相手に対しても同じ答えを提示すればよい定型処理であれば、チャットボットは有効です。従来は人間がメールや電話で行っていた作業をチャットボットで代替できるので、省人化やコスト削減が可能になります。また、24時間365日運用できるのもメリットです。

また、大量の選択肢や情報から最適な解答を検索する際にもチャットボットは有効です。ウェブ上には情報が多すぎるため、検索結果から求める答えを探すのは大変です。たとえば、出張でホテルを予約する際、できるだけリーズナブルかつ出張先から最も近いホテルを探そうとすれば、様々なサイトを訪問して比較検討しないといけません。これには時間も手間もかかります。

ですが、チャットボットを使えば、ウェブ上にある大量のデータを収集・分析して、ユーザーが求める条件に最も適した情報を瞬時に選んでくれます。

たとえば、「ホテルBot」というLINE向けチャットボットでは、『京都で明日から2泊、一万円以下のホテル』というように入力するだけで、求める条件に最も近いホテルを探してくれます。

また、AI(人工知能)チャットボットであれば、よりユーザーと双方向のやり取りができるサービスが提供できます。上記でご紹介した「りんな」は、高度な画像認識技術を用いたファッション診断を行うサービスを展開しています。

この取り組みは10代に人気のファッションブランドのWEGOが行ったもので、ユーザーが自撮りしたコーディネート画像を投稿すると、AIが学習データに基づきそれぞれのアイテムやユーザーの属性を認識・分類して、年齢やアイテムの特徴を分析し、チャット形式でユーザー個人に応じたアドバイスをしてくれるというものでした。りんなはプロのスタイリストからファッション知識を学習したことで、様々なアイテムを認識し、提案まで行えるAIに成長したのです。

チャットボットが不向きなサービスとは

一方で、チャットボットには不向きなサービスがあります。その特徴を挙げてみましょう。

情報のヒアリング

チャットボットは、顧客からヒアリングする情報が多い業務には、現在はまだ不向きとされています。たとえば医療関係であれば、対象者の持病や重症度、また性格や年齢などの様々な条件を考慮して回答する必要があるため、臨機応変な対応ができる人間でなければならないでしょう。一般的な質問であればチャットボットでも対応できますが、専門的な問い合わせや、複数の要因が絡んだ質問についてはやはり人間の方が優れた対応ができます。

しかしながら、同じ質問に対して複数の回答が想定される場合には、まるでシナリオのように「選択肢を持たせた回答」を用意しておくことで、チャットボットでの正答率を上げることができる場合があります。

このようなチャットボットの特性を踏まえた上で、適切な分野でチャットボットを導入すれば、省人化やコスト削減などの様々なメリットを享受することができます。

まとめ

AI(人工知能)

チャットボットというと、つい「AI(人工知能)と会話できる技術」と思ってしまいがちですが、実は両者は異なります。近年ではAI技術の進化によって、チャットボットにもAIが搭載されつつあります。 ですが、現在のAIは人間の会話を完全に理解することは難しく、人間のように会話できるAIが登場するまでにはまだ時間がかかります。

しかし、チャットボットをビジネスに活用することで省人化やコスト削減など様々なメリットを享受できます。チャットボットを有効活用するためにも、どんな分野に向いており、またどんな分野が不向きなのかを知ったうえで、自社のビジネスのどんな分野にチャットボットを活用できるかを考えてみてはいかがでしょうか。

カラクリ編集部

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