ナレッジマネジメントとは
ナレッジマネジメントとは、個人の知識や技術を組織全体で共有することで、組織の力を向上させる経営手法です。
ナレッジマネジメントは、1990年代初頭に一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏らが発表した「SECIモデル」をきっかけに注目されました。
SECIモデルでは、知識を「形式知」と「暗黙知」の2種類にわけています。形式知とは文章で表現されるデータなどのことで、暗黙知は文章で表現しにくい経験やノウハウなどのことです。
ナレッジマネジメントは、個人の中に蓄積されてしまい、言語化されていない暗黙知を、社内の他の社員たちに共有し、形式知に変換していく活動とも言えます。
ナレッジマネジメントが失敗する理由とは?よくある事例
ナレッジマネジメントが正しく行われることで、属人化していた暗黙知を形式知に変え、組織力を高められます。
しかし、実際のところナレッジマネジメントを組織に浸透させるのは難しく、取り組んでも思うように効果が出ず、失敗してしまうケースは少なくありません。
ここでは、ナレッジマネジメントに失敗してしまう組織のパターンを解説します。失敗事例を事前に把握し、ナレッジマネジメントを成功させましょう。
失敗事例1. ナレッジマネジメントの導入目的が明確になっていない
よくある失敗事例は、なぜナレッジマネジメントを導入するのかという目的が明確になっていないケースです。
人間の暗黙知を共有することは、時間も労力も掛かります。「ナレッジマネジメントが組織にとってどれほど重要なことなのか」「どのような目的でナレッジマネジメントを導入し、どのような目標を達成するのか」を決めないで、なんとなくナレッジマネジメントを導入するのは失敗につながります。
失敗事例2. ツール導入後、使われないまま放置されている
ナレッジマネジメントツールを導入したあと、何も使われずに放置されているというのも、よくある失敗事例です。
ナレッジマネジメントツールの種類は、文書管理ツールやオンラインストレージ、グループウェアなどさまざまです。
どのツールにも共通しているのは、導入しただけではただの「箱」でしかない、ということです。環境を整えても、そこに知識やノウハウを集める人がいなければ、ナレッジマネジメントは進みません。
失敗事例3. ツールの使い方やルールが整っていない
ナレッジマネジメントツールの使い方やルールが整っていないというのも、よくある失敗事例です。
優秀な社員ほど忙しい場合が多いので、ナレッジを共有する時間がないことがあります。そんな社員でも使いやすく、比較的労力が少なく済むように、情報共有のルールを決めることが重要です。
ナレッジマネジメントを成功に導くポイント
ここまでは、ナレッジマネジメントの失敗例について見てきました。では、どうすればナレッジマネジメントを成功に導くことができるのでしょうか。成功のポイントを解説します。
ナレッジマネジメントの目的を明確にする
まずは、ナレッジマネジメントの目的を明確にしましょう。ナレッジマネジメントが必要な理由、期待される効果を明確にしたうえで、どのようなナレッジを共有すべきかを決めることが重要です。
ナレッジマネジメントに消極的な社員の意識を変える
ナレッジマネジメントの主体となるのは社員です。成功させるためには、ナレッジマネジメントに対して消極的な社員の意識を変える必要があります。
「わざわざ共有しなくてもいい」「今のままでいい」「自分の知識を積極的に共有したくない」と思っている人が多い組織では、ナレッジマネジメントは失敗してしまいます。
ナレッジマネジメントが組織全体にどのような意味を持つのか、また個人のナレッジを共有することでどれだけの利益があるかなどを社員に伝えることが重要です。
全社導入の前に「スモールスタート」する
組織全体で一斉に行うのではなく、まずはスモールスタートでナレッジマネジメントに取り組んでみましょう。
まずは、一部の部署など、限られたメンバーたちの中で進め、ナレッジマネジメントを実践した現場の声を聞いて検証しながら、少しずつ時間をかけて社内に浸透させていくことが成功への近道です。
推進役を決め、体制とルールを整備する
情報共有を円滑にするためには、体制整備と制度構築に注力することが大切です。ナレッジマネジメントが円滑に進むよう、社員たちをリードする「推進役」となる人物を決め、主体性をもって体制とルールを整備しましょう。
失敗パターンに注意してナレッジマネジメントを成功させよう
競争環境が激化する中で、チーム力の強化はあらゆる組織に求められています。組織全体にナレッジマネジメントの重要性を理解してもらい、目的を明確にしたうえで適切なツールを選ぶことで、ナレッジマネジメントを成功させましょう。