AIエージェントの時代に、コンタクトセンター向けのCRMを新規で出す会社があったら、どう思われますか。
SalesforceやZendeskがあるのに、今さら。
逆行に見えるはずです。私たちのことです。
先日、弊社のお客様向けの説明会で、「製品の具体的な話は一切しない」という縛りを自分に課して、40分ほど話をしました。テーマは、私たちが問われ続けてきた2つの「無謀」。今日はその話を書きます。
無謀その一:AIの時代に、いまさらCRMをつくる
ナレッジ運用の現場には、こういう朝があります。
「また今日も、同じ修正を4つの画面に貼って回る」。FAQ、ボット、トークスクリプト、マニュアル。便利なツールを足すたびに「正」の置き場が増え、新プランのリリース前夜には、どれが最新版か誰にも分からなくなっている。
これは担当者の怠慢ではありません。
ナレッジは「書く」のは簡単で、「書き換え続ける」のが難しい。
その仕組みがこれまで存在しなかった、構造の問題です。
私たちもAIエージェントを売っています。そして売れば売るほど、はっきり見えてきたことがあります。エージェントは、記憶がなければ「物知りな、初対面の人」だということです。
めちゃめちゃ当たり前のことです。
シンプルなテストがあります。
5年前に一度だけ問い合わせをくださったお客様が、今日また窓口に来る。
その記録に触れて、「お久しぶりです。あの節は」と話ができるか。名担当者なら自然にできるこの応対が、AIにできるかどうかは、賢さの問題ではなく、記憶の器があるかどうかの問題です。
知能は、借りられる。記憶は、借りられない。
知能はフロンティアモデルから借りられます。年々、安く、賢くなる。でも「この顧客と自社の間に何があったか」という長いコンテクストだけは、どこからも借りられない。
誰かが構造化し、育て、経営する必要がある。エージェントが機能する条件を突き詰めたら、答えは最先端ではなく、いちばん地味な場所にありました。
だから私たちは、AIネイティブなCRM「KARAKURI CXM」をつくっています。
無謀その二:小さな会社が、基盤モデルをつくる
「なぜ、カラクリのような小さな会社が、基盤モデル開発を? 無謀ではないか?」。
開発を始めた2023年から、ずっと言われ続けている質問です。
やめませんでした。2024年1月にKARAKURI LMを国産オープンモデルとして当時最高性能で公開し、2025年には日本企業初のComputer-Using Agent向けモデル「KARAKURI VL」を公開。Upstageと共同開発した「Syn Pro」は、経産省の「国産基盤モデル」に認定されました。
なぜ続けたのか。
現場に入れるほど、フロンティアモデルだけでは回らないと確信が深まったからです。
これからの問題は、AIが「使われないこと」ではなく「使われすぎること」です。
エージェントはチャットの何十倍もモデルを呼びます。つまり、うまくいくほど請求が増える。効果が出ている現場ほど、トークンの単価構造が経営課題になる。
だから論点は「モデル選定」から「モデル配分」に移ります。難しい判断はフロンティアに、大量・定型の処理はローカルに、機密データの業務は閉域に。
実際、当社のボイスエージェントの会話部分は、いまはフロンティアモデルのSpeech-to-Speechで実装しています。自社モデルを持つ意味は、自社モデルにこだわらない自由を持つことだと考えています。
2つの無謀が行き着いた、ひとつの答え
無謀その一でつくってきたのは、現場の「記憶」。
無謀その二でつくってきたのは、現場の「知能」。
この2つが合流する先を、私たちは「AIと人間の共通OS」と呼んでいます。
やがて、企業の窓口には「顧客のAI」が来ます。いや、すでに来ています。Web、電話、メール、チャットに続く第5のインターフェースとして、顧客の代理人であるAIエージェントが問い合わせてくる。そのときも応対するのは、人間とAIが同じ記憶を読み書きする、ひとつの核です。
2027年あたりから、企業の窓口に来るのは人間だけではなくなります。
そのとき応対の質は、人にもAIにも「選ばれる理由」になります。
現場・現物・現実
講演の最後に話したのは、トヨタの三現主義でした。
綺麗な資料と綺麗なデモだけをお見せすることもできます。
でも、それはしたくない。いま実現できていることと、まだ実現できていないこと。その現実ごと見ていただくのが、いちばん誠実だと考えているからです。
当社カラクリとしては、CXMを核としたAgenticCSプラットフォームを、資料ではなく現物で体感いただく場を増やしていきます。「うちの窓口にとってのAI活用はどこからか」を一緒に考えたい方は、ぜひ現場・現物でお会いしましょう。
(本記事は、CEO小田のnote掲載記事を再編集したものです。元記事はこちら)
※Salesforceは、Salesforce, Inc.の商標または登録商標です。
※Zendeskは、Zendesk, Inc.の商標または登録商標です。
このブログを書いた人
change_historyKARAKURI Marketing team



