【2026年版】プロンプト集はもう古い。カスタマーサポートのための生成AI使い分けガイド 

公開日:

2026/7/3

最終更新日:

2026/7/2

2024年、私たちは「カスタマーサポートで使えるChatGPTのプロンプト集」を公開し、「こまめにアップデートするのでブックマークを」とお願いしました。多くの方に読んでいただいた記事ですが、2026年のいま、正直に言います。プロンプトをコピペして使う働き方そのものが、過去のものになりつつあります。

理由はシンプルです。この2年でAIは「質問に答える相手」から「仕事を任せられる相手」に変わりました。

ChatGPTはエージェントモードでブラウザを操作し、ClaudeはCoworkでローカルファイルを直接処理し、GeminiはGmailやスプレッドシートの中に住み、NotebookLMはマニュアルを読み込んで研修コンテンツまで作ります。一往復の「うまい聞き方」を暗記するより、どの仕事をどのAIに、どこまで任せるかを設計できることが、現場の生産性を分けるようになりました。

この記事では、旧プロンプト集の内容を2026年の現在地に全面アップデートします。変わらない原則、変わったこと、そしてツール別・業務別の「任せ方」レシピをまとめました。今回も保存版です。ブックマークして、業務が変わるたびに戻ってきていただければ幸いです。

それでも変わらない、指示の5原則

ツールがどれだけ進化しても、良い指示の原則は変わっていません。旧記事で紹介した5つのポイントは、2026年版に言い換えるとこうなります。

  1. 明確であること
    「FAQを作って」ではなく「解約手続きに関するFAQを、お客様が読んだだけで自己解決できる粒度で5本」。曖昧な依頼は、人間の新人に対してと同じく手戻りを生みます。

  2. 役割と前提を与えること
    「あなたはアパレルECのカスタマーサポート担当です」という役割定義は、いまも全ツールで有効です。

  3. 具体例を見せること(Few-shot)
    理想の返信文やFAQのサンプルを1〜2本見せるだけで、出力の精度は大きく上がります。エージェント時代でも最強のテクニックのひとつです。

  4. 完了条件を定義すること
    2026年に重要度が跳ね上がった項目です。複数ステップの作業を任せる以上、「何ができたら完成か」「迷ったら作業前に質問すること」を先に渡しておく必要があります。

  5. 検証させること
    「作成後、誤字・敬語・事実関係の3観点でセルフチェックし、修正版を出力してください」。AIに自分の仕事をレビューさせる一文は、そのまま品質保証になります。

つまり、5W1Hや役割定義といった「書き方」の作法は、そのまま「任せ方」の作法に進化しています。

プロンプトエンジニアリングからコンテキストエンジニアリングへ

2026年の生成AI活用を語るうえで欠かせないのが、コンテキストエンジニアリングという考え方です。

プロンプトエンジニアリングが「一回の入力文をどう磨くか」だったのに対し、コンテキストエンジニアリングは「AIが参照する情報環境全体をどう設計するか」を指します。

返信文のトーンガイド、商品マニュアル、過去の優良応対例、エスカレーション基準——こうした情報を毎回プロンプトに貼り付けるのではなく、AIが常に参照できる場所に整備しておく。うまい一文を書ける個人より、良いコンテキストを整備できたチームが成果を出す時代です。

カスタマーサポートに引きつけて言えば、これは目新しい話ではありません。ナレッジマネジメントそのものです。FAQ、トークスクリプト、応対履歴を整備してきたセンターは、実はコンテキストエンジニアリングの下地がすでにできています。

4つのAIツール使い分けマップ

では、どの仕事をどのツールに任せるべきか。2026年7月時点の代表的な4ツールを、カスタマーサポート業務の視点で整理します。

ツール

得意なこと

CS業務での典型的な使いどころ

ChatGPT(GPT-5系)

対話・文章生成・Web調査・エージェントモードによるブラウザ操作

返信文の作成・校閲、ロールプレイ研修、競合や制度の調査

Claude(Cowork / Code)

ローカルファイルの一括処理、複数ステップの作業代行、スキルによる業務手順の再利用

応対ログの一括要約・分類、レポート自動生成、定型業務のスケジュール実行

Gemini(Google Workspace統合)

Gmail・スプレッドシート・Meetの中で完結する日常業務支援

メール下書き、シート集計、会議メモ、Gemsによる部門別アシスタント

NotebookLM

手持ち資料に基づく出典付き回答、音声・動画・クイズへの変換

マニュアルの検索・要約、新人研修コンテンツの自動生成

選び方の軸は2つだけです。「素材はどこにあるか」(Web上か、手元のファイルか、Google Workspace内か、自社ドキュメントか)と、「成果物は一回きりか、繰り返すか」。一回きりの文章生成ならChatGPTやGemini、ファイルをまたぐ繰り返し業務ならClaude Cowork、自社資料への質問と教材化ならNotebookLM、が基本線になります。

ツール別・最初の一歩

「何から試せばいいか」を迷わないよう、各ツールの最初の一歩を用意しました。いずれも30分あれば試せます。

ツール

今日試せる一歩

できたら次に

ChatGPT

よくある問い合わせ1件をコピーし、この記事の返信文生成プロンプトで返信案を作らせる

自部署のトーンガイドをプロジェクト(カスタム指示)に登録し、毎回の貼り付けをなくす

Claude Cowork

応対ログ10件が入ったフォルダを渡し、要約と分類を一括で任せる

同じ依頼をスケジュールタスクに登録し、週次レポートを自動化する

Gemini

Gmailで実際の問い合わせメールに対する下書きを生成させる

部署の定型業務をGem(カスタムアシスタント)として保存し、チームに共有する

NotebookLM

商品マニュアル1冊を読み込ませ、新人からよく出る質問を10個ぶつけてみる

音声概要とクイズを生成し、新人研修の予習教材として配布する

大事なのは、4つ全部を導入することではありません。自分のチームの一番重い業務がどの型か(文章生成か、ファイル処理か、Workspace内作業か、資料参照か)を見極めて、まず1つに絞ることです。

業務別レシピ集

ここからは旧記事の「プロンプト集」を、2026年版の「レシピ集」として更新します。プロンプト例はそのままコピーして使えますが、大切なのは指示文そのものより「どのツールに、何を渡すか」です。

返信文の作成・校閲(ChatGPT / Gemini / Claude)

旧記事の定番ユースケースは健在です。ただし、トーンガイドや過去の優良返信例を一緒に渡すことが前提になりました。

やりたいこと

プロンプト例

返信文の生成

あなたは当社(アパレルEC)のカスタマーサポート担当です。添付のトーンガイドと返信例に沿って、以下の問い合わせへの返信文を作成してください。
完成条件:
①謝罪・回答・次のアクションの3要素を含む
②200〜300字
③断定できない事実は書かない。判断に迷う点があれば、返信文を書く前に質問してください。

校閲とセルフチェック

以下の返信文を校閲してください。
観点:
誤字脱字/敬語の誤り/お客様を不安にさせる表現/事実関係の曖昧さ。
修正版と、修正理由の一覧を出力してください。

トーン別の言い換え

この返信文を「シニアのお客様向けにやさしく」「チャット向けに短く」「英語」の3パターンに書き換えてください。意味は変えないでください。

難クレームの返信案を複数比較

以下は返金規定を超える要求のクレームです。
①規定通りお断りする案
②代替提案でリカバリーする案
③上長エスカレーション前提の一次返信案
の3案を作成し、それぞれのリスクを1行ずつ添えてください。

無機質な案内文を温度のある文章に

入力するのは社内向けの無機質な仕様説明です。この製品について何も知らないお客様にも伝わる案内文に書き換えてください。お客様を気遣う一文を加え、専門用語には短い補足を付けてください。

応対品質評価・モニタリング(Claude / ChatGPT)

QA(応対品質評価)は、2026年に生成AI活用が最も進んだ領域のひとつです。人手では数%しかチェックできなかった応対を、全件評価できるようになりました。

やりたいこと

プロンプト例

応対ログの採点

あなたは当センターのQA担当です。
添付の評価基準(挨拶/本人確認/要約確認/保留の案内/クロージング、各20点)に沿って、以下の応対ログを採点してください。
出力は、項目別スコア、根拠となる発言の引用、総評3行の順にしてください。

優良応対の抽出

このフォルダの応対ログ100件から、顧客の感情がネガティブからポジティブに転じた応対を5件抽出し、転換点となった発言と、他のオペレーターが真似できるポイントを整理してください。(Claude Cowork向け)

フィードバック文の生成

以下の採点結果をもとに、オペレーター本人に渡すフィードバック文を作成してください。
良かった点から書き始め、改善点は具体的な言い換え例つきで、前向きなトーンでお願いします。

要約・エスカレーション(ChatGPT / Gemini / Claude)

コールログ要約は旧記事から引き続き人気のユースケースです。いまは要約単体ではなく、後工程(CRM記録、エスカレーション)とセットで任せるのが定石です。

やりたいこと

プロンプト例

応対履歴のCRM記録用要約

以下の応対ログを、CRM登録用に要約してください。
形式:
用件(1行)/対応内容(2行以内)/顧客の感情(5段階)/残タスク(なければ「なし」)。
事実のみを書き、推測は含めないでください。

エスカレーション文の作成

以下の応対内容を、開発チームへのエスカレーションとしてまとめてください。
含める要素:
事象/再現手順(わかる範囲)/顧客への約束事項/ビジネス影響(対象顧客数や金額がわかれば)。
技術チームが5分で状況を把握できる密度でお願いします。

対応方針の壁打ち

お客様から〇〇という要望がありました。当社の規定では△△です。規定を守りつつ顧客満足を下げない対応方針を3案、それぞれのメリット・リスクつきで挙げてください。

多言語対応(Gemini / ChatGPT)

翻訳は「訳す」から「その言語のCS慣習に合わせて書き直す」へ進化しました。

やりたいこと

プロンプト例

問い合わせの翻訳と背景理解

以下は英語の問い合わせです。
①日本語訳
②文面から読み取れる感情と緊急度
③返信時に配慮すべき文化的な点
の3点を出力してください。

返信の現地化

この日本語の返信文を英語にしてください。
直訳ではなく、英語圏のカスタマーサポートで一般的なトーン(結論先行、過度に謝罪しない)に合わせて再構成してください。

FAQ・ナレッジの整備(NotebookLM / Claude)

FAQのドラフト作成は、ゼロから生成する時代から「実データに基づいて作る」時代になりました。

NotebookLMに商品マニュアル・利用規約・過去の問い合わせ対応集を読み込ませれば、出典付きで回答案を作れます。ハルシネーション(もっともらしい嘘)への一番の対策は、プロンプトの工夫ではなく「参照元を固定すること」です。

やりたいこと

任せ方

問い合わせ傾向からFAQを起案

NotebookLMに過去1ヶ月の問い合わせログと現行FAQを読み込ませ、「現行FAQでカバーできていない質問トップ10を、出典付きで挙げてください。それぞれFAQのドラフトも作成してください」

FAQの品質チェック

Claudeに現行FAQ一式を渡し、「タイトルだけで回答内容が想像できるか/回答は冗長でないか、の2観点で全件を採点し、要修正のものだけBefore/Afterで修正案を出してください」

研修教材への転用

NotebookLMの音声概要・クイズ生成機能で、マニュアルを「聴ける研修」「理解度テスト」に自動変換

VOC分析・コンタクトリーズン分析(Claude Cowork / ChatGPT / Gemini)

旧記事では1件ずつの感情分析プロンプトを紹介しましたが、いまはファイルごと渡して集計まで任せるのが標準です。

Claude Coworkなら、問い合わせログのCSVが入ったフォルダを指定して、こう依頼できます。

  • このフォルダ内の問い合わせログを読み込み、コンタクトリーズンを分類・集計してください。分類軸は「配送」「返品交換」「支払い」「商品仕様」「その他」。件数のパレート分析と、上位3リーズンについて自己解決化の打ち手案をまとめ、Excelレポートとして出力してください。

さらに、この作業をスケジュールタスクとして登録すれば「毎週月曜の朝、先週分のVOCレポートが自動でできている」状態が作れます。プロンプトを「書く」のは最初の一回だけです。

音声データも、テキスト化から任せられる

VOCの宝庫でありながら手つかずになりがちなのが、通話録音です。2026年時点では、音声ファイルを直接扱えるモデル(Geminiの音声理解や、Whisper系の文字起こし)を使えば、テキスト化から分析までを一続きの依頼にできます。

  • このフォルダの通話録音(mp3)をすべて文字起こしし、話者(オペレーター/お客様)を分離してください。文字起こし後、各コールについて「用件」「感情の推移」「未解決事項」を抽出し、1コール1行のCSVにまとめてください。

「録音は聞き返す時間がないから使っていない」というセンターは多いはずです。文字起こしのコストがほぼゼロになったいま、通話はチャットと同じ「分析可能なテキスト」になりました。応対メモには残らない、お客様の生の言い回しや沈黙の位置まで拾えるのは音声ならではです。

1ヶ月分・1000件規模の分析は、段取りごと任せる

「1000件のログをAIに読ませたいが、一度に入りきらない」という相談をよく受けます。ここがエージェント型ツールの真価が出るところです。
Claude CoworkやChatGPTのエージェントモードは、人間のアナリストと同じように作業を段取りに分解して実行します。依頼のコツは、分析の設計図だけを渡して、処理の分割はAIに任せることです。

  • 6月分の応対ログ1000件(logsフォルダ内のCSV)を分析してください。
    手順は任せますが、成果物は以下の3点です。

    ①コンタクトリーズン分類の集計表(分類軸は添付の分類定義.mdに従う。定義にない新種の問い合わせは「新規」として別出しする)
    ②前月(5月分の集計表を添付)と比較して増減が大きいリーズン上位5つと、その原因の仮説
    ③FAQ・ボット・オペレーター教育のどれで解決すべきかの振り分け案 途中で分類に迷うログが一定数出たら、判断基準を確認するために作業を止めて質問してください。

ポイントは3つあります。分類定義を別ファイルで渡すこと(毎月同じ基準で比較できます)、前月データを渡して差分に注目させること(「今月の傾向」は比較がないと語れません)、そして「迷ったら質問して」の一文(1000件を誤った基準で分類し切ってしまう事故を防ぎます)。月次のVOC会議の資料作成が半日仕事から30分になった、という声はもう珍しくありません。

定型業務の自動化(Claude Code / ChatGPT)

旧記事ではGAS(Google Apps Script)のコードをChatGPTに書かせる方法を紹介しました。2026年はさらに一歩進み、コードを書かせて終わりではなく、実行と修正まで任せられます。Claude Codeやエージェントモードは、エラーが出れば自分でデバッグして完走させます。「スプレッドシートのリストに一括メール送信するGASを書いて、テスト実行して、エラーがあれば直して」まで一息で依頼できます。

新人教育・AIロールプレイ(ChatGPT / Gemini)

新人研修は、いま最もニーズが高いユースケースです。従来のロープレには「先輩の時間を奪う」「お客様役の演技が甘くなる」「新人が失敗を見られたくなくて縮こまる」という構造的な弱点がありました。AIロープレはこの3つを同時に解消します。相手はAIなので何度失敗しても恥ずかしくなく、深夜でも週末でも練習でき、お客様役は手加減しません。

電話ロープレ(音声モード)

音声モードの実用化で、電話応対の練習は「台本の読み合わせ」から「本番同様の即興応対」に変わりました。作り方は3ステップです。

まず、お客様役のペルソナを具体的に設計します。「怒っている客」のような雑な指定では、演技も雑になります。

  • あなたはお客様役として、私と電話応対のロールプレイをします。
    以下の設定になりきってください。

    【設定】52歳女性。3日前に注文した商品(誕生日プレゼント用)が、明日の誕生日に間に合わないと今日の配送メールで知った。怒りより落胆が強い。声はやや早口。最初は事情を整理して話せないほど動揺している。

    【行動ルール】オペレーターが共感を示さず手続きの話から入ったら、不満を強める。事情を丁寧に確認されたら、少しずつ落ち着く。代替案の提示があれば前向きに検討する。

    【禁止】自分から解決策を提案しない。オペレーターより先に話をまとめない。 それでは着信からスタートしてください。

次に、難易度を段階設計します。同じシナリオでも設定を1行変えるだけで負荷を調整できます。

レベル

設定の変え方

練習の狙い

初級

協力的で、聞かれたことに素直に答えるお客様

応対フローと言葉遣いの定着

中級

動揺していて話が前後する/要件が複数混ざっている

傾聴と要約確認のスキル

上級

規定外の要求を繰り返す/「上を出せ」と言う

断り方とエスカレーション判断

特級

途中で新しい事実が判明する(注文者と受取人が別人など)

想定外への対応力

最後に、フィードバックの型を仕込みます。応対終了の合図を決めておき、講師役に切り替えさせます。

  • 私が「応対終了」と言ったら、講師役に切り替わってください。

    フィードバックは次の形式で。
    ①良かった発言ベスト2(実際の発言を引用し、なぜ良いかを説明)
    ②改善点2つ(実際の発言を引用し、「こう言えばよかった」の言い換え例を提示)
    ③添付の応対評価シートに沿った採点
    ④次回練習すべきテーマの提案。励ますトーンでお願いします。

評価シートを渡しておくのがポイントです。センターの実際のQA基準で採点させれば、研修と品質管理が同じものさしでつながります。

メールロープレ(出題→返信→添削のループ)

メール・チャット対応の練習は、AIを「出題者兼添削者」にするループ型が効果的です。

  • あなたは新人オペレーター向けのメール応対トレーナーです。
    以下のループを繰り返してください。

    ①当社(アパレルEC)に届きそうな問い合わせメールを1通出題する(添付の頻出問い合わせリストから、まだ出題していないテーマを選ぶ)
    ②私が返信文を書いて送る
    ③添付のトーンガイドと返信例に照らして添削する。
    形式:総合評価(S/A/B/C)/良い点/修正すべき点(Before→After形式で)/模範返信例
    ④私が「次」と言ったら、少し難しくした次の問題を出題する 出題は簡単なものから始めて、正答が続いたら、複数の用件が混ざったメールや、感情的な文面に段階的に上げてください。

このプロンプトの肝は、実際の頻出問い合わせリストとトーンガイドを渡していることです。


汎用の「それらしい問題」ではなく、自社で本当に起きる問い合わせで練習できます。添削がBefore→After形式なので、新人は自分の癖(クッション言葉の欠如、結論の遅さなど)を具体的に自覚できます。

運用のコツ:ロープレを「研修イベント」から「日課」へ

AIロープレの本当の価値は、練習の回数制限がなくなることです。運用に組み込むコツを3つ挙げます。

  1. 1日1本、15分で回す
    着台前の新人なら「午前に電話ロープレ1本、午後にメール添削3本」を日課にします。集合研修の一夜漬けより、毎日の反復が確実に効きます。

  2. ログを教育担当が週次でレビューする
    ロープレの応対ログと採点結果を残せば、新人ごとの成長曲線と苦手パターンが見えます。「全員が苦手なシナリオ」が見つかれば、それは研修資料の穴です。

  3. 実際の優良応対をお手本として渡す
    Few-shotの原則はここでも同じです。センターのトップオペレーターの応対ログをお手本としてAIに渡せば、フィードバックの水準が「一般論」から「うちのセンターの正解」に変わります。

着台までの期間短縮は、多くのセンターで最も投資対効果の高いテーマです。講師の人数がボトルネックだった個別練習が、AIロープレなら新人の数だけ並列で回せます。

日常業務のこまごま(Gemini / Google Workspace)

派手さはありませんが、積み重なると一番効くのがこの領域です。Workspaceの中で完結するため、コピペの往復が発生しません。

やりたいこと

任せ方

シフト調整メールの下書き

Gmail上で「来週のシフト交代を依頼する丁寧なメールを、この受信メールへの返信として下書きして」

スプレッドシートの集計

「このシートの問い合わせ一覧から、チャネル別×週別の件数ピボットを作って。前週比が±20%を超えたセルに色をつけて」

会議の議事メモ

Meetの「メモを取る」機能で自動生成し、「決定事項とTODOだけを抽出してチームスペースに投稿」まで依頼

部署専用アシスタント

よく使う指示(返信文の校閲基準など)をGemとして保存し、チームで共有

使うから、つくるへ ― 簡単なツールは自作できる

2026年の生成AI活用でいちばん見落とされているのが、この視点です。欲しいツールは、買う前に作れないか考える。 コードが書けなくても、Claude CodeやChatGPTに日本語で仕様を伝えれば、ブラウザで開くだけで動くツール(HTMLファイル1枚)が数分で手に入ります。

たとえばテキストマイニングツール。VOC分析で「頻出ワードを眺めたい」だけなら、高機能な分析製品を導入するまでもありません。

  • 問い合わせログのCSVを読み込んで分析する、ブラウザで動くテキストマイニングツールを作ってください。
    HTMLファイル1枚で完結させてください。

    機能:
    ①CSVをドラッグ&ドロップで読み込み
    ②頻出ワードランキング(ストップワードは編集可能)
    ③ワードクラウド表示
    ④特定ワードを含むログの一覧表示
    ⑤期間フィルタ。データは外部に送信せず、すべてブラウザ内で処理してください。

最後の一文がポイントです。ブラウザ内で完結するツールなら、顧客データを外部サービスにアップロードせずに分析できます。セキュリティ制約が厳しいセンターほど、実は「自作」が近道になることがあります。

同じ要領で、現場からはこんなツールが生まれています。

欲しかったもの

自作したもの

高価なテキスト分析製品

CSVを読み込むワードクラウド+共起語ビューア(HTML1枚)

エスカレーション判断の統一

チェックリストに答えると転送先と優先度が出る判定フォーム

応対時間の集計ダッシュボード

CSVを放り込むとチャネル別・時間帯別グラフが出るページ

新人向けの用語集アプリ

社内用語を検索・クイズ形式で学べる単語帳

返金額の計算ミス防止

購入日と条件を入れると規定に沿った返金額が出る計算機

大切なのは、ツールの完成度ではありません。「不便だけど仕方ない」と諦めていた作業を、自分の手で作り変えられる対象として見られるようになることです。オペレーターが自分の道具を自分で改善し始めたセンターは、業務改善の速度が一段変わります。まずは「毎日やっているコピペ作業」をひとつ思い浮かべて、「これを楽にするツールを作って」とAIに投げてみてください。

Few-shotはエージェント時代も最強

旧記事で詳しく紹介したFew-shot prompting(お手本を見せてから任せる方法)は、エージェント時代になっても最も費用対効果の高いテクニックです。使い方が変わっただけです。

かつては毎回のプロンプトにお手本を貼り付けていました。いまは、お手本を「環境」に置いておきます。ChatGPTならプロジェクトの指示とファイルに、Claudeならスキルや参照フォルダに、優良返信例を数本置いておく。すると、毎回の依頼は「この問い合わせに返信して」の一言で済み、出力は常にお手本の水準に引き上げられます。

たとえば、Claude Coworkでフォルダにこの3点を置いたとします。

  • トーンガイド.md:文体・禁止表現・署名ルール

  • 優良返信例.md:シチュエーション別のお手本5本

  • エスカレーション基準.md:即時転送すべきキーワードと条件

このフォルダを指定して「今日の未返信20件に返信案を作成して。エスカレーション基準に該当するものは返信案を作らず一覧にして」と依頼すれば、Few-shotの効果が20件すべてに、毎日、誰が使っても適用されます。

プロンプトの上手さを、ファイル構成の丁寧さに置き換える——これがコンテキストエンジニアリングの実践形です。

始める前に決めておくこと(セキュリティと運用ルール)

任せる範囲が広がるほど、入口のルール整備が効いてきます。センターで生成AIを使う前に、最低限この3つを決めておくことをおすすめします。

  1. 入力してよい情報の線引き:氏名・住所・決済情報などの個人情報は、マスキングしてから入力するのが原則です。「注文番号と氏名は伏せ字にしてから貼り付ける」という一行ルールだけでも事故は大きく減ります。法人プラン(学習に利用されない設定)を使っているか、個人アカウントとの混在がないかも確認しましょう。

  2. AIの出力をそのまま顧客に送らない工程設計:2026年時点でも、顧客に届く文章の最終確認は人間の仕事です。「生成→人が確認→送信」の順序を工程として固定し、確認者の責任を明確にします。ここを曖昧にしたまま効率だけを追うと、一度の誤送信で活用機運そのものが失われます。

  3. うまくいった任せ方の共有先:優れたプロンプトや依頼の仕方は、見つけた人の手元に留めず、チームの共有場所(後述のassistのような仕組み)に集約するルールを最初に作っておきます。属人化は、始めた瞬間から進行します。

個人のプロンプトから、組織のAI運用へ

ここまでのレシピは、明日から個人で試せるものばかりです。ただし、センター全体の成果につなげるには、2つの壁があります。

ひとつは「属人化」の壁。
優れた任せ方を編み出した人のノウハウが、その人のチャット履歴の中に眠ってしまう問題です。KARAKURI assistは、検証済みのプロンプトをワンクリックで呼び出せる形でチームに配布し、自社ナレッジを参照した文章生成までを管理画面で統制できます。個人の工夫を「組織の標準装備」に変える仕組みです。

もうひとつは「品質保証」の壁。
AIに任せる範囲が広がるほど、「誰が出力の正しさを担保するのか」が問われます。私たちはこれを、オペレーター支援(assist)から顧客対応AIエージェント、応答監視のガードレールまでを統合したKARAKURI CXMとして設計しています。プロンプトの上手な個人を増やすことと、AIが安全に働き続ける仕組みを作ること。この2つは、車の両輪です。

2024年に「プロンプト集をブックマークしてください」と書いた私たちは、2026年はこうお願いします。プロンプトを暗記するのではなく、任せられる業務をひとつ選んで、今週AIに任せてみてください。 その一歩が、センターのAI活用の現在地を一番正確に教えてくれます。

生成AIの業務活用やKARAKURI assist・CXMについて相談したい方は、以下のページからお問い合わせください。

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