導入事例

静岡市

市民が“自分の言葉”で情報にたどり着ける行政サービスへ。静岡市が進める、広聴・広報の新しいかたち

導入前の課題

  • 公式ウェブサイトに必要な情報は掲載されているものの、市民が自力で正しいページにたどり着きにくい状況があった。

  • 代表電話には年間約14万件、コールセンターには年間約3万件の問い合わせが寄せられており、市民の声をより細かく分析し、公式ウェブサイトや情報発信の改善に活かしていくことが求められていた。

  • 過去にチャットボットの導入を検討する一方で、FAQやシナリオの作成・更新にかかる職員負担が大きくなることが想定され、導入後も無理なく運用できるかが重要な課題となっていた。

導入後の効果

  • 市民が自分の言葉で質問し、必要に応じて聞き返しを受けながら、適切な公式ウェブサイトの情報にたどり着けるようになった。

  • 会話ログを通じて、市民がどのような情報を探しているのか、どのページに課題があるのかを把握できるようになり、公式ウェブサイトの改善につながっている。

  • FAQやマニュアルを新たに大量作成することなく、既存の公式ウェブサイトを活用して短期間で導入できた。

市民が求める情報に、自然な言葉でたどり着ける仕組みを

──まず、静岡市広報課の役割と、Generative Navigator(以下、GeN)導入の位置づけについて教えてください

静岡市の広報課は、広聴部門と広報部門の両方の役割を持っています。広聴部門は、市民の皆さんのご意見やご提案を伺う部門です。一方で広報部門は、市民の声を市政にどのように反映しているのか、市民にとってどのような取り組みを行っているのかを発信していく役割を担っています。

その中でGeNを導入することで、市民の皆さんが静岡市に何を求めているのか、どのような情報を知りたいのかを把握できるのではないかと考えました。

GeNは市の公式ウェブサイトを情報源として回答する仕組みです。つまり、うまく回答できない場合には、公式ウェブサイト側の情報の出し方やページ構成に課題がある可能性も見えてきます。市民に取り組みを伝えるうえで、根本にあるのは公式ウェブサイトです。GeNの活用は、公式ウェブサイトの見直しにもつながると考えています。

──導入を検討するきっかけは何だったのでしょうか

きっかけは、慶應義塾大学との共同研究でした。静岡市の広報のあり方をどうしていくべきかを共同で研究する中で、市民がもっと簡単に市の情報へたどり着けるようにするには、人による案内だけでなく、ボットのような仕組みも有効なのではないかという提案をいただきました。

市民の方が、自分の自然な言葉で質問し、正確に必要なウェブページへ行ける仕組みが必要ではないか。そうした観点から、さまざまな技術やサービスを調べる中で、カラクリさんに問い合わせをしたのが始まりです。

コールセンターの一次対応率は高い。だからこそ、公式ウェブサイト上で自己解決できるはず

──問い合わせ対応において、どのような課題感がありましたか

静岡市では、代表電話への問い合わせが年間で約14万件、コールセンターへの問い合わせが約3万件あります。コールセンターの職員は、市の公式ウェブサイトやFAQサイトを見ながら問い合わせに対応していますが、一次対応率は9割を超えています。

これは見方を変えると、市民の方が公式ウェブサイト上で必要な情報にたどり着ければ、電話をしなくても自己解決できる可能性があるということです。そこで、より正しいページへ案内しやすくする手段として、AIチャットボットの活用に期待しました。

一方で、AIチャットボット自体には以前から慎重でした。4、5年前にも他自治体の導入状況を見たことがありますが、当時は多額の費用をかけても回答精度に不安が残る事例があり、導入はまだ早いのではないかと感じていました。今回改めてGeNを試したときに、「この内容であれば使える」と感じたことが、導入検討を進める大きなきっかけになりました。

選定基準は「正確性」と「職員の負担軽減」。5社比較で評価が高かったGeN

──プロポーザルでは、どのような基準でサービスを比較されたのでしょうか

プロポーザルには5社参加されました。選定で重視したのは、大きく2つです。1つは正確性、もう1つは職員の負担軽減です。

審査では、審査員に実際にさまざまな質問をしてもらい、正しいページに到達できるか、案内の仕方が適切か、言葉遣いが適切かを確認しました。加えて、FAQやマニュアルを別途作成しなくても、市の公式ウェブサイトにある情報だけをもとに回答できるかという点も重要でした。

他社の中には、別途FAQやマニュアル、シナリオを作成して学習させる提案もありました。しかし、私たちとしては、その運用はできるだけ避けたいと考えていました。公式ウェブサイトはすでに存在しており、これからも充実させていくべき情報基盤です。公式ウェブサイトを更新すれば、それをもとに案内できる。職員の手間を増やさずに運用できる。その点がGeNの大きな評価ポイントでした。

──GeNならではの印象に残っている点はありますか

単に1つの質問に1つの回答を返すだけではなく、聞き返しを通じて正しい情報に導いてくれる点です。市民の方は、制度名や正式名称を知らないまま問い合わせることも少なくありません。自分の言葉で聞いたときに、必要に応じて質問の意図を確認しながら、該当するページへ案内してくれることは重要だと感じました。

準備負担を抑え、各課の声を反映しながら短期間で公開へ

──導入時に苦労した点はありましたか

構築のためにこちらで用意したものは本当に少なかったです。負担は大きくありませんでした。こちらから何かを書き起こさなくても、まずデモ環境を作っていただき、それを各課に試してもらうことができました。

大変だったのは、構築作業そのものよりも、庁内での調整やフィードバックの集約です。各課の職員に実際にGeNを使ってもらい、チャット終了後にアンケートへ回答してもらう形で検証を進めました。集まった意見を整理し、どの部分を改善すべきかをカラクリさんと相談しながら調整していきました。

──導入までの期間はどのくらいでしたか

契約が1月中旬ごろで、3月6日にリリースしています。実質的には1カ月半ほどでした。構築自体は比較的短期間で進み、2月は主にテスト期間として、各課に使ってもらいながら精度を高めていきました。

──庁内検証ではどのような課題が見えてきましたか

人によってAIに求めるレベルが違うことです。AIは100%ではないと理解している人もいれば、人による最終確認と同じレベルの精度を求める人もいます。回答自体は間違っていなくても、「最初の返答でここまで説明してほしい」「この情報も一緒に案内してほしい」といった要望もありました。

ただし、要望をすべてプロンプトに盛り込むと、全体の精度に影響が出る可能性もあります。そのため、どこまで対応するかを切り分けながら調整する必要がありました。プロンプトについては、こちらから細かく指示するというより、「こういうことに困っている」「こうなるとよい」という形で相談し、解決方法はカラクリさんに提案してもらうスタイルで進めました。

会話履歴から、市民の“具体的な困りごと”が見えてきた

──稼働後、どのような手応えを感じていますか

導入後は、会話履歴を通じて市民の具体的な困りごとが見えるようになり、情報発信や公式ウェブサイトの改善に活かせる手応えが生まれています。

たとえば6月上旬に台風があった際、台風前日の夜に「台風でゴミ収集車は来るのか」「台風のときにゴミ出しはできるのか」といった質問が複数ありました。中には「台風」という言葉を使わずに「ゴミ出しできるのか」と聞く人もいます。質問の粒度や表現はさまざまですが、会話履歴を見ることで、市民がどのようなタイミングで何を不安に思っているのかが分かります。

このように、会話履歴を通じて市民の関心を把握できたことで、ゴミ収集に関する案内が十分に届く状態になっているかをGeN上で確認するなど、情報発信を見直すきっかけにもなりました。聞き返しによって質問が具体化されることで、単なるアクセス数では分からない、市民の細かな関心や不安が見えてきます。データが蓄積されれば、本当に活用できる情報になると感じています。

──夜間の利用についてはいかがですか

コールセンターは平日20時まで、土日祝日は17時までです。夜間に疑問に思ったことは、従来であれば次の日に電話するか、自分で公式ウェブサイト内を探す必要がありました。GeNがあれば、時間外でもその場で確認できます。

実際、台風に関する質問も夜の時間帯が多く見られました。災害や天候に関する不安は、必ずしも開庁時間内に発生するわけではありません。市民が気になったタイミングで、必要な情報への入口を用意できることは、行政サービスの向上につながると考えています。

AIが回答できない理由から、公式ウェブサイトの課題も見えてくる

──GeNの導入によって、公式ウェブサイトの改善にもつながっているのでしょうか

はい。GeNを通じて良い回答が出なかった場合、「なぜ回答できなかったのか」を確認すると、公式ウェブサイト側の書き方や情報の置き方に課題があることがあります。

たとえば市役所の駐車場に関する問い合わせでは、必要な情報がPDFリンク先にあり、庁舎案内のページにも駐車場情報をきちんと記載する必要があると気づくことができました。

これまでは「人に見やすいページ」を意識していましたが、今はAIもその情報を読み取って回答します。つまり、人だけでなくシステムにも分かりやすいページにしていく必要があります。GeNのログをもとに改善点を示すことで、所管課へ公式ウェブサイト修正を依頼する際の説得力も増しました。

──具体的に、情報の修正につながった例はありますか

リリース前の精度検証では、保険証とマイナ保険証に関する案内で、所管課から「この回答は間違っているのではないか」という指摘がありました。確認すると、GeNの回答自体が間違っていたわけではなく、公式ウェブサイト上の情報が古い状態で残っていたことが原因でした。

制度変更によって保険証が本人確認書類として使えなくなったにもかかわらず、ページにはまだ使えるような記載が残っていたのです。そのページを修正することで、市民に正しい情報を提供できるようになりました。

GeNは、単に問い合わせに回答するだけでなく、公式ウェブサイトの情報品質を高めるきっかけにもなっています。

電話では見えなかった問い合わせの内訳を、より細かく把握できる

──問い合わせ内容の分析という観点では、どのような価値がありますか

代表電話は年間で約14万件ありますが、どこに対してどのような電話が入っているのかは十分に把握できていません。件数は分かっても、内容までは見えにくいのが実情です。コールセンターの約3万件については、ある程度分野別に把握できますが、GeNではさらに細かい粒度で市民の問い合わせ内容を確認できます。

たとえばゴミに関する問い合わせは、公式ウェブサイトの閲覧数でも多い分野なので想定通りでした。しかしGeNでは、単に「ゴミが多い」というだけでなく、ゴミの中でもどのような内容に困っているのか、どの情報が見つけられていないのかまで見えてきます。

これは、広報や広聴の観点でも非常に重要です。どの時期に、どのような問い合わせが増えるのか。市民がどのような言葉で困りごとを表現しているのか。会話データが蓄積されることで、より具体的に情報発信やサイト改善に活かせるようになると考えています。

“つい電話してしまう人”に、デジタル上で解決できる成功体験を届けたい

──今後は、GeNをどのように活用していきたいですか

目的の1つは、つい電話をしてしまう方に、デジタル上で自己解決できる成功体験を得てもらうことです。問い合わせを電話だけに頼るのではなく、デジタル上で自分で解決できる。その体験を積み重ねることで、デジタルの窓口を継続的に使ってもらえるようにしたいと考えています。

そのためには、まずGeNを知ってもらい、使ってもらう必要があります。今後は広報紙だけでなく、SNSなども活用しながら、市民に知っていただく機会を増やしていきたいです。たとえば、ゴミの分別を写真から調べられる機能は、SNSで紹介しやすいテーマだと考えています。

利用者が増えれば、会話データも蓄積されます。コールセンターの問い合わせ件数、ウェブサイトの閲覧履歴、そしてGeNの会話履歴を組み合わせることで、問い合わせが増える時期を予測し、先回りして情報発信を行うことも可能になるはずです。夏であれば害虫駆除、保育園の申請時期、税金の時期など、季節ごとの問い合わせ傾向に応じて、情報発信のタイミングや内容の精度を高めていきたいと考えています。

市民サービスの入口を増やし、より寄り添った情報案内へ

──他の自治体にGeNを勧めるとしたら、どのような点を伝えたいですか

職員の手間を大きく省ける点です。市の公式ウェブサイトが整備されていれば、別途FAQやシナリオを大量に作成しなくても運用を始められます。職員が新たなナレッジを一から作るのではなく、既存の公式ウェブサイトを活用できることは大きなメリットです。

もう1つは、データ活用がより具体的にできることです。市民が何を知りたいのか、どの情報にたどり着けていないのかを把握できれば、情報発信の精度を上げることができます。

GeNは、市の情報案内の入口を増やす手段でもあります。制度名や正式名称を知らなくても、自分の言葉で質問すれば必要な情報に近づける。市民の知識量や検索スキルに左右されず、より寄り添った形で案内できることは、市民サービスの向上につながると感じています。

実際に、ある番組のリポーターの方が初めてGeNを使った際、制度名を知らなくても「こういう情報が出てくるんだ」「静岡市はこんな案内もしているんだ」と何度も試していました。市民の目線に立つと、知らないことを気軽に聞ける、ちょうどよい入口になるのだと思います。

取材に対応していただいた方々

静岡市 総務局 広報課
広報課長 大塚 泰 氏 / 杉山 貴哉 氏

成果の秘訣を知りたい方は資料をダウンロード

無料で相談可能です

機能詳細や、あなたのチームへのベストなプランをプロフェッショナルに相談することが可能です。お気軽にお問い合わせください。

perm_identity

体験会で相談

スペシャリストが疑問にお応えします

日程を確認する

arrow_forward

よくある質問

ヘルプページなら今すぐに質問を解決できます

ヘルプページをみる

arrow_forward

©KARAKURI Inc.