導入事例

さくらインターネット株式会社

「検索する」から「聞いて解決する」へ。さくらインターネットがGeNで進める自己解決体験の進化

デジタルインフラサービスを提供するさくらインターネット株式会社。同社のカスタマーサービス本部 カスタマーサポート部 CXデザイングループでは、お客様の不安を取り除き、サービスへの信頼を獲得するための顧客体験向上に取り組んでいます。

同社では2021年からチャットサポートを導入し、自己解決を促進するための運用改善を続けていました。一方で、従来のチャットボットでは参照できる情報が限られ、シナリオやナレッジの更新にも工数がかかるなど、運用面で改善の余地がありました。

そこで導入されたのが、カラクリの顧客対応AIエージェント「Generative Navigator(GeN)」です。公開されているサポートサイトや FAQサイトを活用し、曖昧な質問には適切に聞き返しながら、お客様の自己解決を支援します。導入後、GeNを利用したお客様の約8割が有人チャットに進まずに自己解決するなど、顧客体験とサポート運用の両面で成果が見え始めています。

導入前の課題

  • 従来のチャットボットでは、回答対象がFAQサイトのナレッジに限られ、情報量の多いヘルプページを十分に活用できていなかった

  • シナリオやナレッジの作り込み・更新に工数がかかり、運用が属人化していた

  • お客様がチャットボットを使わず、そのまま有人チャットへ進むケースが多かった

  • 自己解決率は約49%で推移しており、さらなる改善を目指していた

  • 自己解決率の算出が「みなし」の指標に留まっており、より詳細な分析が難しかった

導入の効果

  • GeNを利用したお客様の約8割が、有人チャットに進まず自己解決する状態に

  • 公開済みのヘルプページやFAQを活用できるため、チャットボット用データを別途作り込む工数を抑制

  • 曖昧な質問に対しても聞き返しながら、お客様自身の問題整理を支援

  • 有人チャットへ進むお客様が減ったことを、現場メンバーも体感

  • 会話ログやURLクリック状況を確認できるようになり、コンテンツ改善や導線設計の検討に活用可能に

お客様の不安を取り除き、サービスの信頼を獲得する

── まず、CXデザイングループの役割について教えてください

私たちCXデザイングループは、カスタマーサービス本部 カスタマーサポート部の中で、顧客体験を設計するグループです。さくらインターネットはサービスを開発し、提供している会社ですので、ご利用いただくお客様の声を真摯に受け止め、お客様第一で考えなければ、長く使っていただくことは難しいと考えています。

グループのミッションとしては、お客様の不安を取り除くこと、そしてサービスへの信頼を獲得すること。その実現に向けて、多面的なアプローチでCX向上を主導しています。

CXデザイングループには、大きく3つのチームがあります。1つ目は、NPSの調査、VOC分析など顧客体験を向上させるためのあらゆる企画を行うチーム。2つ目は、マニュアルサイトやFAQサイト、X、YouTubeなどを活用して、お客様の自己解決を支援するWeb担当チーム。そして3つ目が、CRMや分析ツールなど、社内外のシステムを管理・導入するシステム担当チームです。

お問い合わせいただくことは、お客様のお時間をいただくことになります。私たちが提供するコンテンツによって、お客様がそもそも自己解決できる状態をつくれれば、より良い顧客体験につながると考えています。

チャットサポートは導入済み。しかし、自己解決率は頭打ちに

── GeN導入前は、どのような課題があったのでしょうか

当社では、2018年に有人チャットを、2021年にはシナリオ型チャットボットを導入し、継続的に改善・運用を重ねてきました。ただ、運用を重ねる中で、少し頭打ちになってきた感覚がありました。

ちょうど同じ頃、対話型AIによる検索や回答が一般的になってきたこともあり、AIチャットを導入することで、お客様の体験をさらに向上できるのではないかと考えました。そこで、会話によってお客様を解決に導くAIエージェントを検討する中で、GeNに出会いました。

従来のチャットボットでは、回答の参照元として活用できるコンテンツが限定されていました。当社にはFAQサイトとは別に、ヘルプページにも多くの情報があります。実際にはWebサイト上に回答が存在しているのにもかかわらず、チャットボットがその情報を提示できない状況がありました。これは大きな課題だと認識していました。

また、シナリオ型の運用では、一つひとつの導線や回答を作り込む必要があります。更新作業も煩雑で、特定の担当者にしか対応できない状態になっていたため、属人化も起きていました。

有人チャット側でも課題はありました。チャットボットをご利用いただけず、そのまま有人チャットに進むお客様が多かったです。

もちろん、お問合せ内容によっては回答できない場合もあります。ただ、従来のチャットボットでは、お客様が入力した内容に対して「おそらくこのFAQが回答です」と提示することが中心でした。質問が少し曖昧だったり、表現が異なったりすると、うまく回答にたどり着けないケースがありました。

自己解決率を上げることは、継続的に取り組んでいた命題でもありました。チャットボットをもっとお客様に使っていただき、なるべく有人チャットに進まなくても解決できる状態をつくりたい。そのためには、当時認識していた課題を網羅的に解決する必要があると考えていました。

決め手は、公開ページをそのまま活かせることと、自然な聞き返し

── 複数社を比較された中で、GeNを選んだ決め手は何でしたか?

いくつかのサービスでデモを試しました。実際のデータを用いて検証を行い、お客様の気持ちになって、あえて答えが出にくそうな質問や、少し曖昧な質問も試してみました。そのうえで、お客様がどのような体験をされるかを確認していきました。

GeNで良いと感じた点の1つは、公開しているページをそのまま取り込めることです。従来は、チャットボット用に別途データを準備しなければならない課題がありました。GeNであれば、すでに公開しているFAQやヘルプページを活用できるため、運用面で大きなメリットがあると感じました。

当社のヘルプページは情報量が多く、内容もリッチです。一方で、お客様が最後まで読み切れなかったり、複数のページを行き来するうちに分からなくなってしまったりすることもあります。従来のチャットボットでは、概要を整理したうえで適切なページに案内することが難しかったのですが、GeNであればそれができる。お客様にとっても理解しやすくなるのではないかと感じました。

もう1つ印象的だったのが、聞き返しです。「困っているがどう説明すればいいかわからない」といった状態でお問い合わせに至った際、GeNがきちんと聞き返して、もう少し質問内容を掘り下げてくれる。お客様もそのやり取りの中で、自分の問題を整理できると思いました。

当社のサービスは、「ログインができなくて困っています」というお悩みに対しては「どの画面へのログインを希望されていますか?」など、詳細のヒアリングをしなければ正しい回答を提示できないケースが少なくありません。そのヒアリングが機械的な文章だと、お客様にとっては不自然な体験になります。

GeNは国産サービスということもあり、日本語表現が柔軟です。「こういうことですか」と自然に聞き返してくれる。その点も非常に良かったと感じています。

1ヶ月弱で、10〜20名規模の検証。意地悪な質問まで試した

── 導入時に大変だったこと、難しかったことを教えてください

カラクリさんのサポートが非常に丁寧でした。少し困ったことや、「こうしたい」という要望があると、「できますよ」「開発に確認してみますね」と受け止めてくださり、やりたいことに対して実現方法を提案していただけました。実際に対応いただいたことも多く、導入プロジェクトとしては進めやすかったです。

一方で難しかったのは、回答にするのに情報が不足している時に、どのような聞き返しをすれば課題解決に到達するのかを見極めることです。何でも聞き返せば良いわけではありません。聞き返しが多すぎると、お客様は「もういい」と感じてしまいます。1回、2回のやり取りでお客様のお困りごとや知りたいことを明確にし、最終的に適切な回答を出せるか。そこはかなり注力しました。

単に「このURLを見てください」ではなく、チャットボットの中でしっかり回答できる状態が望ましいと考えていました。そのため、通常のお問い合わせではいただかないような聞き方や、少し回答が難しい意地悪な質問も含めて、かなり多くのパターンを検証しました。

検証期間は、1ヶ月弱ほどでした。限られた期間ではありましたが、CXデザイングループの3チームそれぞれから代表者が参加し、さらに実際にお客様対応をしているサービスサポートのメンバーにも協力してもらいました。10名から20名ほどのメンバーで、かなり集中的に検証を行いました。

自己解決率は約8割へ。有人チャットへの流入減も現場が体感

── 導入後、どのような成果が出ていますか?

GeNをご利用いただいた後、有人チャットに進まず終了されたものを自己解決と定義しています。その前提では、GeNをご利用いただいたお客様の約8割に自己解決いただけています。

導入前は自己解決率が約5割で推移していたことを考えると、お客様の体験としても良くなっているのではないかと思います。

有人対応をしているメンバーにGeN導入後の変化を聞いてみたところ、体感として分かるくらい、有人チャットをご利用されるお客様が減ったという声もありました。データだけでなく、現場の感覚としても、チャットボットのみで自己解決いただけるお客様が増えていると感じています。

また、お客様からもポジティブな反応をいただいています。先日、お客様と直接お話しする機会があったのですが、「リニューアルしてからのチャットがすごく使いやすくなった」と言っていただけました。導入の成果は、社内の数値だけでなく、お客様の声としても得られていると感じています。

導入前は、1回の問い合わせで3〜4往復くらいのやり取りが発生することを想定していました。ただ、実際の会話ログを見ると、そこまで往復せず、1〜2回くらいで回答できているケースも多くありました。想定よりも早い段階で回答にたどり着けているのは、良かった点です。

当社以外でも、お客様が日常的に生成AIを利用するシーンが増えているので、「こう聞けば答えが出そうだ」とAIとの対話に慣れてきていることも、自己解決率向上の一因だと考えています。

会話ログを、コンテンツ改善と導線設計の起点に

── 運用面では、どのように改善を進めていますか?

社内での改善は、大きく2つあります。

1つは、CXデザイングループで会話データを取得し、会話ごとに確認・分析することです。管理画面から会話データを確認し、どのような会話が多いのか、どこで行き詰まっているのか、どう調整すべきかを見ています。

もう1つは、実際にお客様対応をしているサービスサポートのメンバーからのフィードバックです。お客様から「チャットでこのような回答をされた」といった声があれば、改善希望内容を起票してもらいます。その内容をもとに、自分たちでプロンプトに追記して調整したり、社内で対応が難しいものはカラクリさんに相談したりしています。

以前のツールでは、チャットボットの画面に出てきたURLをお客様がクリックしたかどうかを計測できませんでした。GeNではレポートで集計できるので、どのページに遷移しているのかを確認できます。社内の関係者が確認しやすくなったのは、運用面でもありがたいです。

今後は、会話ログや利用状況をもとに、コンテンツ改善につながる施策を見つけていきたいと考えています。カスタマーサポート側で改善すべき課題を見つけ、ヘルプページやFAQ、導線の改善に反映していきたいです。

ハルシネーションはゼロ前提ではなく、減らす前提で向き合う

── 生成AI型のチャットボット導入にあたって、ハルシネーションへの懸念はありませんでしたか?

懸念がなかったわけではありません。当社でも生成AI向けのサービス開発に取り組んでいることもあり、AIの回答には多少なりともハルシネーションが起こり得るという理解は、社内にあったと思います。

もちろん、「起きてもいい」ということではありません。お客様目線では、できる限り少なくしなければいけない。ただ、「ハルシネーションがゼロでなければ絶対に使えない」という考え方ではなく、起こり得るものとして理解したうえで、いかに発生を抑えていくかに向き合う姿勢でした。

実際、検証では意図的に難しい質問や、想定外の質問も入れました。回答が困難になるような入力に対しても、GeNがきちんと受け止め、丁寧な表現で応答してくれる場面がありました。以前のチャットボットは「分かりません」「回答できません」で終わってしまうことが多かったので、そこは印象的でした。

社内でも「GeNは想像より賢い」「優秀だね」という声をよく聞きます。導入して良かったと感じています。

サイト内検索の先にある、新しい自己解決体験へ

── 今後、GeNを活用して取り組みたいことを教えてください

GeNをご利用いただいたお客様の約8割が自己解決できている一方で、まだGeNを利用せずに有人チャットへ進むお客様も多くいらっしゃいます。つまり、まずはGeNを使っていただくこと自体が、今後の課題です。

GeNを使っていただければ、お客様の多くのお悩みをお問い合わせいただかなくとも解決できる可能性が高いことは、数字としても見えてきました。だからこそ、もっと使っていただくための導線設計や企画を進めていきたいと考えています。

たとえば、会話データを分析すると、メールサービスの利用やトラブルに関するお問い合わせが多いことが見えてきました。一方で、メール関連のカテゴリにはまだチャットの導線を十分に置けていません。お客様が必要としている場所に、適切にAIチャットへの導線を設けていくことが重要だと考えています。

私たちとしては、チャットの利用状況をもとに、コンテンツ改善に繋がる課題や気づきを見つけていきたいです。お客様が何に困っているのか、どこで迷っているのかを把握し、サポートコンテンツや導線の改善につなげていく。GeNを単なるチャットボットではなく、顧客体験改善の起点として活用していきたいと考えています。

── 最後に、今後の展望を教えてください

将来的には、サイト内検索をチャットに置き換えるような体験も検討しています。検索窓にキーワードを入れてページに飛び、自分で探すのではなく、その場で質問して回答まで得ることができる状態が望ましいと考えています。

今は、問い合わせ前にAIを使って解決を試みるケースも増えています。お客様が回答を求める速度は、確実に上がっていると思います。そうしたお客様のニーズや時代の流れに合わせて、自己解決体験を最適化していきたいです。

その先では、無人チャットと有人チャットの体験をよりシームレスにつなげることも重要だと考えています。現状では、無人チャットでやり取りした内容を、有人チャットで再度伝えなければならない場合があります。これはお客様体験の面でも改善余地がありますし、データ分析に活用できる情報を十分に取得できないという課題でもあります。

どのような質問をして、どこで自己解決できず、なぜ有人対応に進んだのか。その流れを把握できれば、より精度の高い改善が可能になります。将来的には、無人対応と有人対応がより自然につながり、分析にも活かせる状態を目指していきたいです。

GeNは、単に問い合わせ件数を減らすためのツールではありません。お客様が求める情報に早く、分かりやすくたどり着くための入口であり、サポートコンテンツを改善するためのデータ基盤でもあります。

「検索する」から「聞いて解決する」へ。お客様の期待が変化する中で、さくらインターネットはGeNを活用しながら、自己解決体験のさらなる進化に取り組んでいきます。

さくらインターネット株式会社

本社:〒530-0011 大阪府大阪市北区大深町6-38 グラングリーン大阪 北館 JAM BASE 3F
設立:1999年8月17日
従業員数:1,135名(連結)※2026年3月末時点
事業内容:クラウドコンピューティングサービスなどの提供、データセンター運営
企業公式サイト:https://www.sakura.ad.jp/corporate/

取材に対応していただいた方々

さくらインターネット株式会社
カスタマーサービス本部 カスタマーサポート部 CXデザイングループ
中村 達朗 氏
熊野 麻美子 氏

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