
民放公式テレビ配信サービス「TVer」。成長を続ける動画配信プラットフォームだ。
TVerは、視聴体験と同じくらい、サポート体験の質にもこだわる。ユーザーとの接点である問い合わせ対応は、単なる業務の一部ではなく、ブランド価値を左右する重要な機会。そう考える同社は、サポート品質のさらなる向上を目指していた。
しかし、委託ベンダーのオペレーターごとに異なる対応、バラバラに管理されたナレッジ、使いづらい検索環境──TVerのサポート現場には、さらなる成長に向けて解決すべき課題が複数あった。
改善を試みる中で、従来のマニュアル整備や勉強会だけでは限界があることを痛感。そんな中、TVerが見出したのは、「人の対応力を引き出すAIアシスト」という新たなアプローチだった。
株式会社TVerについて
ーまず、株式会社TVerについて教えてください
株式会社TVerは、民放各局が制作した安心・安全なテレビコンテンツを、いつでもどこでも完全無料でお楽しみいただける民放公式テレビ配信サービス「TVer(ティーバー)」を主に運営しています。
属人対応が招く品質のバラつき──TVerが直面した課題
ー当時どのような課題を抱えていましたか?
TVerでは、カスタマーサポート業務の一次対応を外部ベンダーに委託しており、4〜5名体制で運営しています。また、社内のカスタマーサポートチームは2〜3名で運営されています。
当時の課題として最も大きかったのは、オペレーターごとに対応方法が異なり、対応品質にばらつきが生じていたことです。同じ問い合わせ内容に対しても、オペレーターによって参照する情報源が異なり、回答内容に微妙な差異が発生していました。
たとえば、あるオペレーターは過去の問い合わせ履歴から、別のオペレーターは長年使っている問い合わせツールを使って、さらに別のオペレーターは自身が管理している対応マニュアルを参照するなど、ナレッジの参照方法が統一されていない状況でした。その結果、すでに仕様変更されているにも関わらず、古い情報に基づいた回答を行ってしまうケースも見受けられました。
さらに、従来使用していた問い合わせツールでは、検索がタイトルベースでしか行えず、ナレッジをうまく引き出せないという制約もありました。そのため、タイトルを正確に把握していないオペレーターにとっては検索が困難で、対応経験の差によって回答精度にも大きな開きが生じていました。
最適解として見つけたのは、“人の対応を支援するAI”
ー課題解決に向けて、当初はどのような対応策を検討されていましたか?
こうした課題を解消するため、社内ではさまざまな対策が講じられました。たとえば、ベンダー向けにマニュアルを整備したり、勉強会を開催したりといった取り組みを継続的に行ってきました。しかし、属人性の解消や対応品質の安定化にはなかなか結びつかず、改善には限界があると感じていました。

また、対応の効率化と問い合わせ件数の削減を目的に、チャットボットの導入も検討されました。しかし、月間の問い合わせ件数やユーザー層の特性を踏まえた結果、「チャットボット単体では大幅な削減効果は見込めない可能性がある」といった懸念から、一度は導入を見送る判断となりました。
こうした状況の中、カラクリさんから「チャットボットよりもまず、人の対応を支援する仕組みを整えるべき」との提案があり、KARAKURI assistの導入を検討することになりました。
KARAKURI assistは、オペレーターが適切なナレッジにすぐアクセスできるよう支援するツールで、これまで課題となっていた「ナレッジの散在」「対応方法の属人化」「検索性の低さ」を一挙に解決する可能性を持っていました。
導入の決め手は「ナレッジの探しやすさ」と「生成AIによる文面支援」
― KARAKURI assistを導入する決め手となったポイントについて教えてください
一番の決め手は、ナレッジの検索性の高さです。以前使用していたツールでは、ナレッジをタイトルベースでしか検索できなかったため、「どんなキーワードで登録されていたか正確に思い出せない」というケースでは情報にたどり着けないことも多く、情報を探し出すのに苦労していました。
その点、KARAKURI assistではタグやあいまい検索にも対応しており、「なんとなくこの単語が入っていたような気がする」といった状態でも情報にアクセスできるようになりました。実際に私自身も、「確かあのワードが入っていたはず」と思い出しながら検索して、すぐに該当ナレッジを見つけられることが何度もありました。検索性の向上が、現場の業務効率化に確実に貢献していると実感しています。
また、ショートカットキーで簡単にナレッジを呼び出せる点も非常に便利です。カスタマーサポートの対応はどうしても時間との勝負になる場面が多いため、操作の手間が少ないことは大きなメリットです。
さらに、ナレッジの中に過去の問い合わせ事例も掲載できる機能があるため、「この問い合わせは以前のこの対応と同じ内容だから、同様の回答で対応しよう」といった判断がしやすくなりました。これにより、事例を探す手間も大幅に削減されています。
最後に、特にありがたかったのが、問い合わせに対して生成AIが回答文の例を提案してくれる機能です。たとえば、センシティブな内容に対して、表現に悩むことがあるのですが、KARAKURI assistの生成AIに頼ることで、「このような言い回しはいかがでしょうか?」といった文案を提示してもらえます。それを参考にすることで、文面作成にかかる工数が削減できる点も大きな利点でした。
生成された文案をそのまま使用するわけではありませんが、参考にすることで対応の質が向上していると感じています。
スムーズな定着に向けた工夫と運用改善
― 貴社では、オペレーターへの定着に向けてどのような工夫をされましたか?
はい、まず意識したのは検索のしやすさを最大限に高めるナレッジ整備です。具体的には、ナレッジ登録の際に複数の検索ワードに引っかかるようタグを工夫して付けたり、できる限りすべてのナレッジに過去の事例を掲載するようにしました。こうすることで、経験に差があるオペレーターでも直感的に活用できるような構成を意識しました。
また、実際の運用に入ってからは、1〜2ヶ月後に外部ベンダーの担当者へ使用感をヒアリングしました。「検索しにくいナレッジはないか?」「足りない情報はないか?」といった観点でフィードバックをもらい、ナレッジの内容は継続的にアップデートしています。外部ベンダー対応範囲の問い合わせについては、「KARAKURI assistを使えば、ほぼすべての問い合わせに対応できる」という状態を目指して整備を進めています。
さらに、生成AI機能に関しても丁寧に準備しました。言い回しに悩むような、伝え方が難しい問い合わせに対応する際に活用できるよう、「どのような表現がユーザーの気持ちに寄り添いながら誠意や丁寧さを伝えられるか」といった点をカラクリさんと相談し、プロンプトのチューニングも行いました。
― ベンダーの方々が新ツールに戸惑うケースもあるかと思いますが、抵抗感などはありませんでしたか?
特に大きな抵抗はありませんでした。導入後1ヶ月ほどで使用感を確認したところ、「使いやすくなった」といったポジティブな声が多数あがりました。中でも、「検索がしやすくなった」という評価が多かったですね。
不具合などの緊急性の高い事象が発生した場合には、速やかに「こういった内容で回答してください」といったナレッジをKARAKURI assistに登録し、ベンダーに周知しています。その上で、ベンダー側でもすぐにそのナレッジをもとに対応を開始できる体制を整えているため、情報の統一とスピーディな対応が可能になっています。
ナレッジ選択ミスがゼロに。精度と安心感の両立を実現
― KARAKURI assistを導入されてからの定量的な効果について、もし現時点で把握されているものがあれば教えていただけますか?
まだ導入から1〜2ヶ月と間もないため、問い合わせ件数やエスカレーション件数の変化といった定量的な指標については、現在も経過観察中です。
ただ、現場で大きな変化として感じているのが、ナレッジの選択ミスによる案内の誤りがなくなったことです。以前は、正しい情報を伝えるために参照すべきナレッジを選び間違え、意図とは異なる内容で案内してしまうケースが定期的に発生していました。しかし、KARAKURI assist導入以降、こうした案内ミスはゼロ件になっています。

― ミス削減の要因はどこにあると感じていますか?
ひとつは、ナレッジに過去の対応事例をあらかじめ記載できる点が大きいと思います。「この問い合わせはこの事例と同じだから、この回答で問題ない」と自信を持って対応できるようになり、迷いがなくなりました。
もうひとつは、検索時にナレッジ本文の一部が一覧でプレビュー表示されるUIも効果的です。以前のツールでは、ナレッジの中身を確認するのにいちいち別画面を開く必要があり、手間がかかっていたため、その点も選択ミスの原因になっていたと思います。
KARAKURI assistでは、検索結果一覧からでも中身をある程度確認できるため、視認性が高く、選択ミスのリスクが自然と低減されていると感じます。
エスカレーション率の削減と自己解決の促進を目指して
― 今後KPIとして設定されている目標や、現在取り組まれている指標などはありますか?
現在注力しているのは、エスカレーション数の削減です。KARAKURI assist導入前は、不十分なご案内が見受けられ、その是正のために対応内容について積極的にサポートしていました。しかしその結果、今度はベンダー側が過度に慎重になり、必要以上に方針確認のエスカレーションが増えてしまっている状態です。
理想としては、過去の対応事例やナレッジを活用して、スムーズに判断・対応できる体制を整えたいと考えています。
― エスカレーション削減以外に、カスタマーサポート部門として掲げているミッションはありますか?
お客様の体験をより良くするという意味で「問い合わせ数の削減」という目標を立てていますが、最大のミッションは、「ユーザーと同じ目線に立ち、ユーザーを理解する」ことです。私たち、カスタマーサポートがユーザーの声を正確に収集・分析・理解し、サービス企画・開発部門へフィードバックする橋渡し役となることも重要だと考えています。
カスタマーサポートはユーザーとの最前線にいるため、問い合わせ内容を通じて多くの「改善のヒント」を得ることができます。それを社内の各チームと共有し、サービスの質を向上させるサイクルをつくることが、長期的に見てもカスタマーサポート部門の重要な役割であると考えています。
株式会社TVer
本社:〒105-0004 東京都港区新橋2-19-10 新橋マリンビル6F
設立:2006年4月3日
従業員数:231名
事業内容:民放公式テレビ配信サービス「TVer」の運営
企業公式URL:https://tver.co.jp/
【取材に対応していただいた方々】
株式会社TVer コーポレート本部 コーポレートコミュニケーション部 堀本 麻未 氏
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