導入事例

オルビス株式会社

AIチャットボットは「察する接客」ができるか?オルビスが満足度78%で証明した購入前サポートの新境地

EC売上が8割を占めるオルビス ── 創業以来のDNAを受け継ぎ、お客様の購入前の迷いに寄り添ってきた同社は、デジタル時代の新たな挑戦に乗り出していた。年々高まるEC比率とともに、チャットボットには「問い合わせ対応」を超えた役割が期待されるように。目指したのは「美容のパーソナルトレーナー」のような存在。一人ひとり異なる肌の悩みや美容感度に合わせて、購入前の体験そのものをリッチにすることで、ブランドへの信頼と「自分に合った商品を選べている」という実感を届けたい ── それがオルビスの描く理想のデジタル接客だった。

この「Feel First, Learn Later(まず感じて、学びはあとから)」というフィロソフィーを実現するために、同社が選んだのは、お客様の困りごとを察してサポートを行う”KARAKURI hello”の導入。そして全ページの会話データをカスタマージャーニーに沿って可視化する「VOC世界地図」の構築だった。

その先にあったのは、満足度61%から78%への飛躍的向上と、AIが「察する接客」で創り出す、これまでにない購入体験の形だった。


オルビス株式会社について

ーまず、オルビス株式会社について教えてください

オルビスは、1987年の創業以来「肌が本来もつ力を信じて、引き出すこと」を信念とし、 「ここちを美しく。」をブランドメッセージに掲げる、スキンケアを中心とするビューティーブランドです。創業時より徹底した顧客視点で本質を追求しており、常識に捉われない挑戦を続けて、ここちよい毎日に寄り添った商品やサービスを展開しています。


新たな挑戦、「美容のパーソナルトレーナー」としてのチャット接客を目指して

ー2022年からKARAKURI chatbotを導入されていますが、当時どのような課題がありましたか?

当社がKARAKURI chatbotを導入したのは、オンラインでの顧客接点をさらに充実させ、よりパーソナライズされたデジタル接客を実現するためでした。

コロナ禍を経て非対面チャネルの重要性が高まる中、既存の仕組みではお問い合わせフォームや電話への誘導に頼らざるを得ない場面があり、シームレスな顧客体験の実現に課題を感じていました。さらに、当時はボット運用を外部に委託していたこともあり、チューニングの自由度にも限界がありました。そこで、自社で柔軟に改善できる体制づくりが急務となったのです。

KARAKURI chatbotは、直感的に使える管理画面や柔軟なシナリオ設計、効果測定をしやすい分析機能などを備えており、運用を自社内で継続的に磨き上げられる点が、当社の目指す「美容のパーソナルトレーナーのような接客」に最適だと感じ、導入を決めました。

ーより洗練された顧客体験を目指す中で、チャットボットに対する期待や位置づけはどう変わっていきましたか?

EC比率が年々高まる中で、チャットボットには「問い合わせ対応」以上の役割が求められるようになってきました。当社もまさにその変化を捉え、チャットボットを“購入前のお客様の不安を払拭するデジタル接客チャネル”として再定義し、KARAKURI helloの導入検討を始めました。

※KARAKURI hello:顧客の閲覧ページや行動から困りごとを察知し、AIが自動で適切な質問をサジェストするプロアクティブサポート機能。KARAKURI chatbotのオプションサービス。

当社は、創業当初から通販を主軸としたビジネスモデルで展開してきました。お電話やカタログなどを通じて、購入前の不安や迷いにしっかり寄り添ってきた歴史があります。その流れを汲んで、現在はECが主戦場となる中でも、オンライン上でいかにその“人肌感のある安心感”を届けられるかが、非常に重要なテーマになっています。

オルビスの通販売上のうち約8割はオンラインチャネルが占めており、お客様が購入を決める前の疑問や不安を解消する“接点の質”が売上に直結すると言っても過言ではありません。

お問い合わせはもちろん、実はそれ以上に重視しているのが“購入前”の段階での体験です。購入前の体験をリッチにしていくことで、お客様が自分に合った商品を選べているという実感につながり、ブランドへの信頼感も高まります。チャットはそのための重要なタッチポイントだと考えています。

また、オルビスが提供する体験全体の軸には、「Feel First, Learn Later(まず感じて、学びはあとから)」というフィロソフィーがあります。まずはブランドの世界観や感性を“感じてもらう”こと。その後で、自分に合った商品やケア方法を“学び、選ぶ”流れを支援するのが、我々のカスタマーエクスペリエンスの考え方です。

チャットも同じで、ただ情報を出すのではなく、お客様が「これが私に合っている」と納得して選べる状態を作るための存在であるべきだと考えています。KARAKURI helloには、その役割を担う進化した対話力を期待していました。

「どの肌タイプに合うのか」一人ひとり違う迷いに、AIは人間を超えられるか

ー導入を検討するうえで、特に重視されたポイントは何でしょうか?

KARAKURI helloの導入を本格的に検討するにあたって、まずは2023年10月にPoCを実施しました。

検証の一番のポイントは、お客様満足度をしっかりと担保できるかどうかでした。これまでのチャットボット活用は、購入後のお問い合わせ対応が中心で、ある程度定型的な内容が多かったため、比較的スムーズに運用できていた実感がありました。

ただ、今回KARAKURI helloに期待していたのは、むしろ購入前の体験をいかに充実させるかという点。購入前はお客様一人ひとりの悩みや迷いにばらつきがあり、定型では対応しきれないケースも多くあります。たとえば、同じ商品でも「どの肌タイプに合うのか」「他の商品との違いは何か」など、気になるポイントは人それぞれです。そうした“グラデーションのある相談”に対して、AIがどこまで自然に、納得感をもって応答できるかを重視して検証を行いました。

また、もうひとつの重要な観点は、商品情報のばらつきに対する対応力です。当社ではスキンケア商品に限らず、メイクや食品など幅広いカテゴリーの商品を取り扱っており、商品詳細ページにかけられるクリエイティブ投資にも差があります。そうした情報が限られている商品においても、チャットを通じて十分な案内ができるかどうか──この点もPoCで確かめたい大事なテーマでした。

ーPoCで、導入に向けて手応えを感じたのはどんなところでしたか?

KARAKURI helloに可能性を感じた理由のひとつに、「お客様の困りごとに応じて、AIが自動で質問をサジェストしてくれる機能」があります。従来のシナリオ型では、ページごとに異なる“お困りごと”をすべて事前に想定して設計する必要がありましたが、KARAKURI helloは文脈を読み取り、自動で適切な対話を始めてくれる。まるでお客様の状態を読み取って接客してくれる存在のように感じられたんです。

その印象どおり、PoCでは、情報が十分に整備されていないページでも、一定の納得感あるコミュニケーションが成立し、満足度が大きく損なわれることもありませんでした。むしろ、「これまで拾いきれなかったお客様の声に応えられる可能性」を感じられたことが、導入に向けた大きな手応えとなりました。

商品説明不足のページでも納得して買ってもらえる?究極のAI接客力で満足度は78%超の高水準に

ーPoCを通じて見えてきた効果や変化があれば教えていただけますか?

PoCを通じて最も顕著に現れたのが、お客様の満足度の改善でした。KARAKURI helloを導入したPoC期間中、チャット体験後の満足度は61%から78%へと大幅に向上。本格導入後もその水準は維持され、設置場所の拡大により、2025年7月時点では約83%まで伸長という高い評価が継続しています。

満足度向上の背景には、商品情報のばらつきをチャットが補完できたことが大きかったと捉えています。当時、商品ページによって情報量に大きな差があり、特に食品カテゴリーなどの一部商材は、ほぼ説明がない状態でした。いわば“パッケージを見て判断してほしい”という状況で、正直、お客様の立場からするとかなり不安が大きかったと思います。

KARAKURI helloは、そうした情報が不足している領域においても、自然な対話で疑問に応え、納得感のある案内ができたことで、「サポートしてくれる安心感」そのものが体験価値につながったと振り返ります。実際、PoC中にhelloを適用した食品カテゴリーでは、特に高い満足度が記録されました。

KARAKURI helloの会話分析が暴いた、購買プロセス全体に潜む「つまずきの連鎖」

ー顧客満足度の向上以外に、得られた成果があれば教えてください

KARAKURI chatbotとhelloを運用していく中で、印象に残っているエピソードがあります。

ポイントの利用に関するお問い合わせが非常に多く、これは電話やメールなど、あらゆる接点で以前から頻出していました。もともと、購入金額や購入履歴に応じてポイントが付与される仕組みになっているのですが、ポイントの利用条件があるものに関して「使えるのかどうかがわかりにくい」「使えると思っていたのに反映されない」といった声が多く、特に最終確認画面に対するご意見が顕著でした。

そのため、私たちも「まずは最終確認画面のUIを改善しよう」と考え、実際にその部分に集中して対応を続けていました。ところが、KARAKURI chatbotを通じてVOCを横断的に見ていったところ、ポイントに関する疑問や不安は、最終確認画面だけでなく、もっと早い段階――つまり、お買い物の入り口から既に生まれていたことがわかりました。これは、KARAKURI helloを導入し、ページごとによく見られている会話カードの利用状況――つまり、カスタマージャーニー上の“どこでどんな困りごとが生まれているのか”を可視化できるようになったことで、初めて気づけたことでした。

※会話カード:チャットボットに登録する質問と回答のセット

たとえば、マイページで「いま○ポイント付与中」と案内していても、それが「どの商品に使えるのか」「どのタイミングで適用されるのか」がわからないまま、購入を進めているお客様が多い。そういった“つまずき”が、実は購入プロセス全体に点在していました。

この気づきは、KARAKURI chatbot経由で集まったVOCを、お客様の購買導線に沿ってマッピングしたことで得られました。社内にVOC分析が得意な“職人”のようなメンバーがいまして、すべてのページとお問い合わせ内容をマトリックスにして、「どこで」「どんな声が」「どれだけ出ているか」を一枚のシートに可視化してくれたんです。私たちはそれを“世界地図”と呼んでいるのですが、VOCと購買導線の相関関係が一目でわかるようになりました。

チャットデータが業務を変える――定点観測で問い合わせ削減、5日間分析でカート率4%UP

ーVOCを活用した改善活動で、特に大きな成果が出た事例があれば教えてください

チャットボットを通じて得たVOCは、体験全体の改善に直結する手がかりとして、日々の業務にも活用しています。大きくは2つの成果がありました。

1つ目は、ポイントや定期契約に関する問い合わせの削減です。これは先ほどのポイントの話とも関連するのですが、KARAKURI helloを通じてVOCを定点観測することで、「どのタイミングでどのような疑問が生じているのか」を明確に把握できるようになりました。その結果、会話カードの見直しやページ上の案内の改善につなげることで、実際にそうした問い合わせが目に見えて減少していて、大きな手応えを感じています。

もう1つは、新商品の詳細ページ改善にチャットのVOCを活用した取り組みです。当社ではほぼ毎月、新商品をリリースしていますが、お客様の美容感度には幅があり、情報の受け取り方にも個人差があります。そこで、商品詳細ページを作り込む際に、あらかじめチャットを設置しておき、リリース直後の5日間で集まったお客様の声を集計・分析し、伝わりにくい表現や疑問が多い箇所をすぐにクリエイティブに反映するというサイクルにしています。

たとえば、商品選択ブロックの文言や説明が不十分なことで離脱が起きていそうな箇所に対して、チャットを通じて「どこでつまずいているか」を把握し、もし修正難易度が高い場合には会話カードでフォローすることもあります。カート投入率は前年同月比で約4ポイント向上しました。もちろん、要因はチャットだけではありませんが、事前に起こりうる疑問を想定した設計と、リリース後の素早い改善対応を強化できたことは、確実に成果に寄与していると感じています。

「いきなりAI任せにしない」運用が高評価を支える

ー運用面で工夫されていることがあれば、教えていただけますか?

満足度の高水準を維持している理由として、リリース前の丁寧な設計と、データに基づく運用改善が挙げられます。

KARAKURI helloは、導入して終わりではありません。学習精度を高めるためにも、最初はシナリオで基本的な想定問答を組み立て、その後数ヶ月の運用データをもとにKARAKURI helloへ切り替えるという流れをとっています。特に新商品では初動の顧客体験がとても重要なので、リリースのタイミングにも細心の注意を払っています。

さらに、毎月のレポートで以下のような項目を細かく分析しています。

  • どの会話カードがよく見られているか

  • 自由入力でどんな質問がされているか

  • 閲覧状況や離脱ポイントの傾向

  • 想定される“埋もれやすいけれど重要な情報”の見極め

こうした定性・定量の両面からの見直しにより、「お客様が実は気になっていること」に事前に気づき、的確に仕込んでおく工夫が、安定したチャット体験につながっていると考えています。

アプリへの展開と多様化する顧客接点への対応へ──「声」を軸にしたグロースハックを

ー今後の展望を教えてください

今後の展望としては、これまでECサイトで成果を上げてきたVOCを起点とした改善のアプローチを、アプリにも横展開していきたいと考えています。

現在、オルビスではECとアプリ経由の売上がほぼ半々になってきており、以前はECが中心だったものの、アプリの利用が急速に伸びてきています。ただ、同じオンラインチャネルであっても、ECサイトとアプリではお客様の行動特性が大きく異なります。たとえば、ECサイトの場合は月に1〜2回程度の訪問が一般的ですが、アプリでは月に4回以上アクセスされることも多く、さらに記事コンテンツの閲覧や店舗でのポイントカード利用など、接点の幅も広がっています。

そうしたなかで、従来の「購入体験中心」のサポートから、より多様な目的でアプリを訪れるお客様に対して、どのようなサポートや情報提供が求められるか、という新しい課題が生まれてきています。

これまでは、EC担当とVOC担当がペアを組んで改善サイクルを行ってきましたが、アプリでは店舗・コンテンツ・ポイント施策など、関わるステークホルダーが倍以上に広がることになります。すると当然、取り組むべき課題やアイデアも増え、何を優先的に進めるべきかの判断がより難しくなってくるわけです。

そのとき、重要になるのが定量データと定性データの両面からの意思決定です。中でも私たちが特に重視しているのが、お客様の声─つまりVOCです。お客様が実際に何に困り、どんな疑問を抱いているかというリアルな声は、施策の優先順位を判断する上で、非常に重要な判断材料になります。

だからこそ、今後はアプリにおいても、KARAKURI helloの仕組みを活かしながら、VOCを起点にしたグロースハックの仕組みを構築していきたいと考えています。オンラインとオフラインが融合する文脈の中で、より幅広い顧客体験を支えるために、チャットボットの可能性を引き続き探っていきたいと思っています。


オルビス株式会社

本社:〒142-0051 東京都品川区平塚2-1-14
設立:1984年6月
従業員数:1,051名(2024年12月末現在)
事業内容:化粧品、栄養補助食品、ボディウェアの企画・開発および通信販売・店舗販売
企業公式サイト:https://corp.orbis.co.jp/about/

取材に対応していただいた方々

オルビス株式会社
CX統括部 部長 田村 陽平 氏
CX統括部 リサーチ&CSグループ グループマネジャー 太刀川 侑希 氏

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