
海外の商品を取り扱うEC事業を展開する株式会社ショップエアライン。お客様から寄せられる問い合わせは、配送状況の確認や輸入可否、通関ルールなど、個別性が高く複雑なものが多い。
属人化したナレッジ管理、検索しづらい社内マニュアル、日本語検索に課題を抱える多国籍スタッフ──お客様対応の品質と業務効率を両立させるうえで、解決すべき障壁の存在。
そこで同社が選んだのは、ナレッジを軸に生成AIを活用する「KARAKURI assist」の導入。既存環境を活かしたスモールスタートから始まり、現場に根づくAI活用を確立する。
ナレッジの一元化と判断スピードの向上、エスカレーションの削減と心理的負担の軽減を実現する、AIとの協働体制の第一歩。その先に見据える、サポート現場の進化とは。
株式会社ショップエアラインについて
ーまず、株式会社ショップエアラインについて教えてください
株式会社ショップエアラインは、BEENOS株式会社のグループ会社です。 「世界をもっと身近に感じてほしい」 そんな思いから生まれた、海外ショッピングサイト「セカイモン」を運用しています。
セカイモンは、15億点以上の商品数、2万を超えるカテゴリーを誇る日本最大級の海外ショッピングサイトです。これからも皆様が素敵な商品と出会い、そしてセカイモンを身近に感じてもらえる場を提供し続けていきます。
FAQでは対応しきれない複雑な問い合わせとナレッジ検索の難易度が課題に
ーどのような業務上の課題がありましたか?
当社では、お客様対応の品質と業務効率を両立させるため、比較的早い段階からAI活用に取り組んできました。カラクリさんのチャットボットを導入したのは、およそ6年前のことです。当時はまだ「AI」という言葉がそれほど浸透しておらず、世の中のチャットボットも決まりきった応答を返すだけのものが多かった印象です。
そうした中で、カラクリさんのソリューションは、将来的に当社の独自データベースと連携し、より柔軟かつ高精度な対応が可能になるポテンシャルを感じさせるものでした。長期的に見た際の拡張性を重視して、まずはスモールスタートという形で導入を進めたのが当時の経緯です。
その後の運用を通じて、いくつかの課題も明確になってきました。特に大きかったのは、チャットボットと社内データベースの二重管理です。ボットに設定した会話カード※とは別に、社内で保持している商品情報や輸入可否、通関ルールなどのデータベースが存在し、それぞれの更新・管理に多くの工数が発生していました。また、チャットボットの仕様上、回答はあらかじめ設定した内容の範囲内に限られ、それ以外の問い合わせには十分に対応しきれないという制約もありました。
※会話カード…チャットボットの会話に使われる質問文と回答文のセット

お客様からのお問い合わせは、たとえば配送状況の確認や商品の輸入可否といった、個別具体的な内容が多く、FAQだけではカバーしきれないケースが多々あります。社内には対応ルールやマニュアルが多数存在していますが、それらは複雑で検索性が低く、必要な情報にたどり着くまでに時間がかかる状況でした。結果として、各担当者が独自に作成した「非公式マニュアル」を頼りに業務を進めるケースも多く、情報の属人化が進んでしまっていました。
加えて、当社では外国籍スタッフも多く在籍しており、日本語による情報検索の難易度が業務負荷につながる場面もありました。社内用語や略語の多さも一因で、特定の語句で一字一句一致していないと検索にヒットしないという仕様が、情報アクセスの障壁になっていたのです。仮に目的のマニュアルにたどり着けたとしても、そこから該当箇所を探すのに時間がかかるという課題も根強く残っていました。
ナレッジ活用を軸にした柔軟なAI活用体制をスモールスタートで構築
ー課題に対してどのような解決策を検討しましたか?
まずは世の中でどのようなサービスが提供されているのかを把握するところから始めました。各社が提供しているAIソリューションの資料を取り寄せ、導入事例なども確認しましたが、正直なところ、機能面で大きな差異が見えづらく、どれが自社に適しているのかを判断するのは難しいと感じていました。
自社のデータベースを活用しながら、より柔軟に回答を導き出せるような仕組みが必要だと感じていたところ、カラクリさんから今回導入した「KARAKURI assist」のご提案をいただきました。こちらであれば、必要最小限の構成でまずは運用を始められる可能性があると感じ、検討を進めることになりました。
その後、カラクリさんともディスカッションを重ねる中で、私たちの業務や体制に即した導入方法をご提案いただき、スモールスタートで無理なく始められる点も非常に魅力的でした。生成AIというと、どうしても大がかりな仕組みや専門的な運用を想像してしまいがちですが、KARAKURI assistは、既存の環境を活かしながら、スムーズに導入が可能だと感じました。
最終的には、お客様一人ひとりの状況に合わせた応対を実現するために、社内に蓄積されたナレッジをより活用できる体制づくりが必要不可欠であり、その実現に向けた第一歩として、KARAKURI assistの導入を決断しました。
少人数でのトライアルから全体展開への道を設計
ートライアルはどのように進められましたか?
KARAKURI assistの導入に先立ち、2か月ほどのトライアル期間を設けました。期間としては2025年2月から3月にかけてで、チーム内から5名ほどが参加し、管理者に加えて、実際に現場で日々お客様対応を行っているメンバーにも試用してもらいました。現場の実務感覚を反映するうえでも、運用に携わるメンバーの視点を加えることは非常に重要だと考えていました。
実際に触れてみた当初は、正直なところ戸惑いもありました。というのも、私自身あまり技術寄りのバックグラウンドを持っているわけではなく、プロンプトや変数といった専門的な言葉に慣れるまで、多少の時間を要したためです。うまく動作しなかったときに「どこを修正すればよいのか」がすぐに分からず、どう対応すべきか迷う場面もありました。ただ、それも操作に慣れてくるにつれ徐々に解消されていき、今では非常に便利に使わせていただいています。慣れてしまえば操作性も高く、トライアル期間中にも「これは業務にしっかり馴染んでいくな」という手応えは感じていました。

一方で、もう1名のメンバーは初期段階からプロンプト設計に積極的に取り組んでおり、自分で作ったプロンプトが想定通りに応答するまで試行錯誤することに楽しさを感じていたようです。技術的な操作に対するハードルは低かったようで、管理画面の構成や操作性にも好意的な印象を持っていたようです。こうした多様な視点が交差したことで、トライアル全体としてもバランスの取れた評価ができたと感じています。
ートライアルでは、どのような目標を設定されていましたか?
トライアル期間中は、「この期間内で成果を出す」というよりも、導入を前提とした準備期間という位置づけで進めていました。実は当初、ナレッジの整備が十分でなく、仮の情報を入れてテストする場面も多くありました。そのため、トライアルの前半では出力結果の精度が上がらず、一定の課題は感じていました。ただ、後半になるにつれ、マニュアルやナレッジの登録作業を並行して進めたことで、徐々に回答の精度も高まり、期待していた形に近づいていきました。
この期間を通じて大事にしていたのは、ツールそのものに慣れること、そして「どのようにすれば意図した応答が返ってくるか」を現場メンバーが理解できるようになることでした。プロンプトの試行錯誤も含め、ツールと向き合う時間をしっかり確保できたことで、導入後の滑らかな立ち上がりにもつながったと実感しています。
散在していたベテランの知見を全員で活用できる仕組みに
ー定着に向けた工夫や活用を促す仕掛けがあれば教えてください
現在、私たちのチームでは約20名がKARAKURI assistを利用しています。メンバー全員が同じ業務を担当しているわけではなく、たとえば配送対応、輸入規制、商品到着後の対応、さらには海外出品者とのやり取りなど、業務は多岐にわたっています。そのため、利用の定着状況にはまだばらつきがあるというのが正直なところです。
新人や若手メンバーに対しては、KARAKURI assistを中心に業務を進めるよう指導しています。たとえば、エスカレーションを受けた際には「まずはassistで確認してみてください」と促すようにし、ツールを使いこなす習慣づけを意識しています。私自身も管理者として、文章の確認や改善の場面で「assistでこう組み立てるといいですよ」と実演を交えながら支援しています。こうした取り組みを通じて、少しずつ使用のハードルを下げていくことを心がけています。

さらに、定着を促す工夫として、ベテランメンバーが保有していた大量のテンプレートや文章例を一度集約・整理し、KARAKURI assistに活用できる形に整備しました。100件以上の資料が集まりましたが、中には古い情報も多く、更新されていない内容もあったため、すべてをそのまま使用するのではなく、精査したうえで一部をナレッジとして登録しています。
プロンプトに関しては、カラクリさんのご支援を受けながら、「このプロンプトはこういった役割を担う」という設定を明確に記述するよう工夫しました。AIに意図を伝えるための“立ち位置”を言語化することで、より意図通りの回答を得やすくなっていると感じています。また、ナレッジの形式についても、Q&A形式が最も効果的だと伺っていたため、過去のエスカレーション事例などを可能な限りQ&A化し、整理・登録を進めています。
現在は、業務ごとにプロンプトやナレッジを分けて構築し直すプロジェクトも進行中です。さまざまな業務が混在していると情報が錯綜してしまい、回答の精度にも影響が出るため、より最適な構成に見直すことで精度向上につなげたいと考えています。
プロンプトの作成やナレッジ登録については、特定の担当者を明確に定めているわけではありませんが、改善案が出た際にはチームで共有し、必要に応じて私やもう一人のメンバーが修正を担当しています。ツールの改善と活用は、チーム全体で取り組むべきプロジェクトとして位置づけており、全員が主体的に関わることで、徐々に定着を図っている段階です。
「まずassistで確認」が現場の新習慣に──AIの活用が心理的負担の軽減にも寄与
ーKARAKURI assistの活用で、どのような成果が出ていますか?
導入から一定期間が経過し、徐々にではありますが、具体的な成果も見え始めています。特に効果を実感しているのは、「社内に点在していたナレッジが一元化されつつあること」と、「日々の業務の中で発生していた細かな作業の効率化が進んでいること」です。
もともと、私たちのチームでは業務の複雑さゆえに、対応の判断材料となるマニュアルやルールが様々な場所に分散しており、それを探し出すこと自体が大きな負担になっていました。今では、それらの情報をKARAKURI assistに集約・整理していくことで、「まずはここで調べてみよう」と思える場所ができ、判断のスピードが確実に上がっています。精度が高まれば、そこを起点に確信を持って対応できるという意識も浸透しつつあります。
エスカレーションの対応についても、大きな変化が見られています。もともと私たちのチームは、日々の対応の中で確認や判断に迷うケースが多く、エスカレーションが頻繁に発生していました。その一部が、KARAKURI assistを使うことで自己解決できるようになりつつあります。たとえば、判断に迷った際にassistを活用し、回答内容を提示することで、対応者の自信にもつながっています。私自身も、エスカレーション対応の際に「本当にこの回答で合っているのだろうか」と不安になることがありましたが、assistに確認してもらうことで確証を得られ、それが精神的な安心感にもつながっています。
また、特に嬉しかったのは、煩雑な計算業務が軽減されたことです。当社では、箱のサイズや重量が変わった場合の送料差額計算や、地方消費税を含む総額計算が頻繁に発生します。これまではExcelや電卓を使いながら都度手作業で計算し、その都度「これで正しいか」を複数人で確認する必要がありました。KARAKURI assistに計算式を組み込んだナレッジを登録したところ、重量や金額などのデータを貼り付けるだけで、適切な料金や差額を自動的に計算し、回答してくれるようになりました。今はまだテスト運用の段階ですが、担当者が苦手意識を持っていた部分がAIによって代替されている点に、大きな可能性を感じています。
エスカレーションに関しては、発生件数や一件あたりの所要時間を日々ウォッチしており、それを削減することもチームのKPIの一つとして設定しています。KARAKURI assistだけでなく、他の施策とも連動しながら取り組んでいますが、今後さらに活用が進めば、数字としても着実な改善が見えてくるのではないかと感じています。
社内ナレッジ活用から対外展開へ、AIを共に働く“相棒”に育てる
ー今後の展望を教えてください
今後に向けて、まず重点的に取り組んでいきたいのは、KARAKURI assistの活用精度をさらに高めていくことです。現時点でも一定の効果は見えていますが、ナレッジの構成やプロンプト設計にまだ改善の余地があると感じており、それらを丁寧にブラッシュアップすることで、ツールのパフォーマンスを最大限に引き出していきたいと考えています。
また、将来的には社内運用にとどまらず、条件を整えたうえで、対外的なチャネルにKARAKURI assistのような生成AIツールを展開していくことも視野に入れています。たとえば、社内向けに使っていた機能をベースに、エンドユーザーからの問い合わせに対してもAIが一定の対応を担えるようになれば、CS業務のあり方そのものを大きく変えられる可能性があります。そのためには、ナレッジの整備精度や、業務の標準化、想定外の質問への対応力などを高めていく必要がありますが、少しずつ段階的に取り組んでいく計画です。
AIは苦手な作業を補完してくれる“相棒”のような存在だと感じています。だからこそ、私たちの現場においても、AIを「便利な道具」としてだけでなく、「一緒に働くパートナー」として育てていけるよう、これからも地道にチューニングを続けていきたいと考えています。
株式会社ショップエアライン
本社:〒141-0031 東京都品川区西五反田8-4-13 五反田JPビル7階
設立:2007年4月
従業員数:40名(アルバイト含む)※2024年12月現在
事業内容:インターネットショッピングに関する海外関連事業の企画・開発・運営
企業公式URL:https://www.shopairlines.com/
取材に対応していただいた方々
株式会社ショップエアライン 執行役員 藤田 氏
株式会社ショップエアライン サービス開発グループ サブマネージャー 橋村 氏
株式会社ショップエアライン サービス開発グループ 品質改善チーム リーダー 岩崎 氏
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