金融商品に関する高度な知識と、投資初心者から経験豊富な投資家まで幅広い層への対応が求められるお客さま対応業務。
三菱UFJアセットマネジメント株式会社では、電話と問い合わせフォームを中心とした対応体制から、FAQやチャットボットなど複数チャネルを統合した「コンタクトセンター」への転換を進めていた。
しかしながら、新NISA制度の開始による投資信託の保有者の増加や、それに伴い自社ファンドの商品性や運用状況などに関する問い合わせが段階的に増加していくことが想定される中で、正確かつ分かりやすい情報提供の重要性が一層高まり、従来のFAQシステムの大幅な改修が必要と考えていた。
こうした背景から検索性や運用性に優れた新たなFAQ基盤の整備を起点に、同社ではチャットボットとの連携や生成AIの活用によって大幅な刷新を実現する。対応の質と効率を高める新たな情報提供の仕組みとは。
三菱UFJアセットマネジメント株式会社について
ー まず、三菱UFJアセットマネジメント株式会社について教えてください
三菱UFJアセットマネジメントは、三菱UFJフィナンシャル・グループの資産運用における中核会社として、お客さまの大切なご資金を運用する資産運用会社です。
経営ビジョンである『「あなた」と「社会」の豊かな未来に貢献する』を実現するため、幅広い人々からさらに信頼される総合運用会社をめざし、お客さまのニーズに応える多様な資産運用サービスを提供することに努めています。
増え続けるお問い合わせへの備えと、お客さま接点の変化に応える体制づくり
ー 当時どのような課題を抱えていましたか?
当社では従来「コールセンター」という名称でお客さま対応を行っていましたが、2023年度から「コンタクトセンター」に名称を変更しました。これにより、有人対応にとどまらず、FAQやチャットボットといった多様なチャネルを通じてお客さまと接する体制へシフトしていくことを検討していました。
そうした体制を整える中で、新NISA制度の開始などに伴う将来的なお問い合わせの増加に備え、当社ファンド等に関する情報をお客さまのニーズに合わせてあらゆる方法でお届けする仕組みが必要だと感じるようになりました。その一歩として、お客さまが自ら情報を探しやすくし、ご自身で悩みを解決できる仕組みが重要だと考え、FAQやチャットボットなどのノンボイスチャネルへの拡充を進めていきました。
情報提供の精度向上を狙い、まずはFAQを強化
ー 課題解決に向けて、当初はどのような対応策を検討されていましたか?
自己解決手段としてまず強化を検討したのが、FAQのリプレイスでした。従来のFAQはAIが搭載されておらず、検索性やメンテナンス性に課題があり、最新の問い合わせに対応できる情報が十分に揃っているとは言えませんでした。こうした背景から、お客さまのニーズに応えられる問い合わせ対応が難しい状況に直面していました。
チャットボットとの比較検討も行いましたが、当初は「本当に欲しい回答が返ってこない」という印象があり、まずは質の高い情報を確実に提供できるFAQから着手することにしました。
投資相談に近い問い合わせが多い当社では、しっかりとした説明が求められる場面が多く、FAQであれば多種多様な情報を整理して提供しやすいという点も重視しました。

将来的な活用を見据えて、AI技術と拡張性が決め手に
ー 数あるサービスの中から、どのような観点で選定されたのでしょうか?
FAQシステムの選定にあたっては、複数のサービスを比較検討しました。最終的にカラクリさんを選定したのは、大規模言語モデルへの取り組みなどAI技術に注力していたこと、FAQにとどまらずチャットボットなどとの連携を見据えた拡張性があったこと、そして導入時だけでなく、リリース後を含めたサポート体制が充実していたことが理由です。
FAQを単体で導入するだけでなく、将来的に業務全体と連携し、ナレッジを組織に蓄積できる基盤としての役割を期待していました。
FAQ閲覧数1.5倍を達成、検索性向上と改善サイクルが定着
ー KARAKURI smartFAQを導入してみて、どのような効果がありましたか?
FAQ導入後、自然検索からの流入やページ閲覧数(PV)の増加といった効果が徐々にみられるようになりました。PVは導入前比で約1.5倍にまで伸び、検索ワードの可視化によって、お客さまがどのような情報を求めているのかも把握しやすくなりました。特に、キーワードサジェスト機能の導入やFAQ構成の見直しにより、検索性が向上し、外部検索からのアクセスもしやすくなったことがPV増加の要因と考えています。
さらに、継続的なコンテンツ拡充にも取り組んでおり、現在はほぼ毎月のペースで新規コンテンツを追加しています。電話や問い合わせフォーム、チャットボットなどを通じて寄せられた内容を分析し、特に重要度の高いものから優先的にFAQに反映しています。件数の多さだけでなく、少数でも影響度の大きい内容については積極的に取り上げており、投資初心者の方にも分かりやすく、一歩踏み込んだ内容になるよう意識してコンテンツを作成しています。
ページごとのニーズ把握と連携強化を目的に、チャットボットを選定
ー チャットボット導入を検討された背景や理由について教えてください。
FAQに続いてチャットボットの導入も進めました。背景にあったのは、ページごとの検索行動やニーズを可視化したいという思いです。ファンドの種類が多いことから、それぞれのページでどのような情報が求められているかを把握するには、チャットボットの活用が有効だと考えました。
導入にあたっては、FAQとのナレッジ共通管理によって生まれるシナジー効果も重視しており、結果として再びカラクリさんを選定することになりました。
問い合わせ意図の可視化とAIによる改善サイクルの進化
ー KARAKURI chatbotの導入によって、どのような変化がありましたか?
チャットボットを通じて、お客さまの問い合わせ意図がより明確に把握できるようになりました。FAQと異なり、会話形式で入力されるため、質問の背景や意図が読み取りやすくなっています。また、回答候補を複数表示する機能を利用することで、ユーザーが回答にたどり着きやすくなるように工夫しています。
日々のVOC分析を通じて検索されなかったキーワードを拾い上げ、FAQやチャットボットの改善を進めるPDCAサイクルも定着しています。チャットボットの運用においては、AIアドバイザー(※)機能も日々の改善を支える重要な要素となっています。
※AIアドバイザー:チャットボットの改善点を提案してくれる機能。質問と回答のセット(会話カード)の整理や追加など、日々の運用に役立つヒントを自動で提示します。
ー 日々の改善でAIアドバイザーが重要な役割を果たしているとのことですが、具体的にどのような場面で効果を感じられましたか?
AIアドバイザーの提案を活用することで、さらに運用精度が高まったと感じています。例えば、「売却」と「換金」など、お客さまによって異なる言い回しにも対応できるようになり、AIアドバイザーからの提案で想定される質問のパターンを追加したことで、検索ヒット率の改善につながったと考えています。
さらに、実際のユーザー入力をAIアドバイザー経由で確認する中で、為替を取りに行く時間として「10時」と記載していた表現に対し、「これは日本時間ですか?」という問い合わせが寄せられたことがありました。このような一言が、表現の曖昧さを見直すきっかけとなり、より正確で親切な情報提供に向けた改善につながっています。
AIアドバイザーは単なる自動化のための補助機能ではなく、ユーザー視点の気づきを得るための重要なサポートツールとして、日々の改善サイクルを後押ししてくれています。

迷わず情報にたどり着ける仕組みと、生成AIが支える“相談しやすい窓口”へ
ー 今後の展望をお聞かせいただけますか?
今後は、FAQやチャットボットを通じて、お客さまが必要な情報に迷わずたどり着ける環境を整えていきたいと考えています。また、運用会社として、正確で信頼できる情報を主体的に発信していく姿勢を一層強めていく方針です。
現在はインデックスファンドを中心にFAQを構築していますが、今後はアクティブファンドに関する深い情報発信にも力を入れていきます。運用会社ならではの視点で、検索ニーズに的確に応えるコンテンツづくりを推進していく予定です。
さらに、コンタクトセンター内だけでなく、全社的にナレッジ基盤を活用できる仕組みづくりを進めていきます。
ー 生成AI活用についてはいかがでしょうか?
投資に関するお問い合わせの中には、「今売った方がいいですか?」といった漠然とした不安や判断の迷いに近い内容も含まれます。そうした声に対し、AIが直接アドバイスを提供するわけではありませんが、壁打ちのような形で不安を受け止めたり、必要な情報に自然に導いたりすることで、お客さまの安心感につながると考えています。
最終的には、オペレーターとの対話につなげていく前段階として、生成AIが“気軽に相談できる存在”として機能することで、コンタクトセンターの価値をより高められると考えています。
三菱UFJアセットマネジメント株式会社
本社:〒105-7320 東京都港区東新橋1-9-1 東京汐留ビルディング
設立:1985年8月1日
従業員数:910名
業務内容:投資運用業、投資助言・代理業、第二種金融商品取引業
企業公式URL:https://www.am.mufg.jp/
【取材に対応していただいた方々】
三菱UFJアセットマネジメント株式会社 カスタマー・コミュニケーション部 コンタクトセンター室長 佐藤 知美 氏
三菱UFJアセットマネジメント株式会社 カスタマー・コミュニケーション部 コンタクトセンター 兼 推進戦略グループ シニアマネジャー 原 晋平 氏
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